2025年10月15日(水)
主張
ガザ人質解放
停戦の厳格実施と包括和平を
パレスチナ・ガザで2年以上にわたって続いた惨劇を終わらせるための重要な一歩となり得る、歓迎すべき事態が進展しています。イスラエルとイスラム組織ハマス双方が停戦合意を厳格に実施し、ガザでの戦闘の完全終結、イスラエル軍の撤退と占領の終了、全ての人質の解放、人道支援の開始を強く求めます。
ハマスは13日、イスラエルから連れ去り、ガザで拘束していた人質20人を解放しました。イスラエルとハマスの停戦合意は10日に発効し、72時間以内にハマスが全ての人質を解放することになっていました。生存している人質は第1陣7人、第2陣13人に分け、赤十字国際委員会に引き渡された後、イスラエル領内に送られました。死亡したとみられている残る28人の人質の遺体は今後、返還される予定です。
■軍は全面的撤退を
人質の解放は、トランプ米大統領が9月に示した20項目からなるガザ和平計画の第1段階の柱です。イスラエル側もこれと引き換えに、終身刑などで収監されているパレスチナ人250人と、2023年10月のガザ侵攻以降に同地区で拘束した1700人の釈放を始めました。
今回のイスラエルとハマスの合意を一時的な停戦に終わらせず、恒久的な和平につなげる必要があります。
今年1月に成立した停戦合意は、短期間で崩壊しました。イスラエルが3月、ガザからの軍の全面撤退を拒否して人質解放を要求し、ハマスがこれに応じなかったなどとして攻撃を再開したためです。
しかも、イスラエルは交渉でハマスに圧力をかけるためなどとして、ガザへの人道支援物資の搬入や電力の供給などを止め、深刻な飢餓を広げ、ジェノサイド(集団殺害)を新たな段階にエスカレートさせてきました。
その轍(てつ)を踏まないためには、国際世論の圧力を背景とした国連と国際社会の関与が不可欠です。
ガザでの死者は、6万7000人を超えます。子どもの犠牲は2万人以上、破壊されたがれきに埋まる行方不明者は推定で1万人近くに上ると報じられています。餓死者も出ています。
■人道支援を直ちに
急がれるのは、ガザへの人道支援を全面的に再開することです。イスラエルは、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)をはじめ国際的な人道支援活動への妨害を直ちにやめるべきです。
パレスチナ問題の公正な解決のためには、▽イスラエルの1967年以来の不法占領の終結▽独立国家樹立を含むパレスチナの自決権の実現▽両者の生存権の相互承認―という三つの原則的立場が重要です。パレスチナを国家承認する国は、国連加盟国の8割を占めています。
今回の停戦合意は、国際社会の声に押されたものです。これを機に、全面的で包括的な和平の実現と、パレスチナの自決権を含む2国家解決に進むことが求められます。そのためにはイスラエルの国際法・人道法違反を許さない強い姿勢が必要です。日本政府もそのために積極的な役割を果たすべきです。