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2025年10月14日(火)

主張

戦後80年首相所感

侵略戦争の反省 なぜ語らない

 石破茂首相は10日、戦後80年に寄せての「所感」を発表しました。今年に入ってから石破首相は、「二度と戦争を起こさせない観点が重要だ。なぜあの戦争を止めることができなかったか、考えをのべたい」と繰り返してきました。しかし、「所感」は先の戦争について考えるうえでもっとも重要な、どういう戦争であったかの歴史認識を語らず、植民地支配や侵略戦争をまったく反省していません。

■歴史認識にふれず

 「所感」は冒頭、先の戦争については戦後50年、60年、70年の首相談話が発出されており、「歴史認識に関する歴代内閣の立場について、私もこれを引き継いでいます」と表明しています。

 先の戦争については、村山富市首相の戦後50年談話が、「日本が国策を誤り」、「植民地支配と侵略」をおこなったという歴史認識を示しています。以後の歴代内閣でも公式見解として踏襲され、日韓、日中、日朝間の政府合意文書にも取り入れられ、国際的合意文書になっています。

 この到達に逆行したのが、戦後70年の安倍晋三首相談話です。朝鮮の植民地化をすすめた日露戦争を美化し、村山談話の歴史認識をまったく語らず村山談話を事実上、投げ捨てるものでした。だから高市早苗総裁ら自民党の右派勢力は、安倍談話を否定させてはならない、と石破首相が80年談話を出すことに繰り返し反対してきたのです。

 村山談話と安倍談話―この矛盾した談話を一くくりにして「引き継いだ」という石破首相の歴史認識とは何かを語らず、逃げています。

 先の戦争が日本の侵略戦争だと明確にすることは、日本が国際社会、とりわけアジアで外交をすすめていくうえでの基盤であり、戦後80年にあたって日本の首相に求められていることです。

 ところが石破「所感」は、侵略戦争との根本的な認識を欠いたまま、「政治システムは、なぜ歯止めたりえなかったのか」と論点をそらせていきます。

 「所感」は、「文民統制の重要性」「議会とメディアの問題」などにも言及しています。しかし、こうした問題が生まれた土台にある根本問題、すなわち侵略戦争であったこと、それをすすめた絶対主義的天皇制と結びつけて明らかにしないため、なぜそういう問題が生まれたのか明らかにならないのです。

 日本が無謀な戦争の道を歩んだ原因に絶対主義的天皇制があります。絶対不可侵の天皇が大元帥として陸海軍の最高指揮権を持ち、軍部が暴走しうる体制でした。治安維持法に象徴されるように民主主義が圧殺され、反戦の声は徹底的に弾圧され、国民は事実を知らされませんでした。こうしたことを指摘しないのでは、「二度と戦争を起こさせない」教訓を語ったことにはなりません。

■問われる日本政治

 自民党内で戦後80年談話を発出すること自体に妨害があったこと、発表にこぎつけたものの首相「所感」が侵略戦争についての認識を語れなかったことは、同党が国際社会の到達からいかに取り残されているかを示しています。


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