2025年10月14日(火)
きょうの潮流
人質の母親は「もう二度と抱きしめることはできないと思っていた息子を抱きしめられる」。ガザ市からの避難民は「自分が生き延びたことを信じられない。生活を取り戻したい」▼イスラエルとガザの市民から喜びと歓迎の声があがった停戦合意。その第1段階としてハマスが生存するという人質の全員を解放しました。イスラエルも拘束しているパレスチナ人約2000人を釈放するとしています▼イスラエルの音楽フェスなどを襲い1200人を殺害し、およそ250人をガザに連れ去ったとされるハマスの攻撃から2年。すでに亡くなっている人質も多いといい、残された家族らの思いは複雑です▼一方、イスラエルによる集団殺害で6万7000人を超える犠牲者を出したガザでは、流血と破壊が終われば長く険しい再建の道のりが始まります。本紙の特派員が伝えるように、子を殺された母親や手足を失った子どもたちの悲しみや苦しみを抱えながら▼完全勝利に固執してきたネタニヤフ首相も国際世論に押された形に。虐殺の日々をくり返さないためにも、双方が着実に合意を履行していくことが求められます。トランプ米大統領は「戦争は終わった」と得意げですが、そのためにはパレスチナの自決権を含む2国家解決の実現が不可欠です▼ガザのジャーナリストは、世界がパレスチナ人の権利を認め、占領の不当性を理解し、イスラエルの孤立が深まった結果だと本紙に語りました。そして「平穏な生活ほど美しいものはない」と。