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2025年10月13日(月)

自民党旧安倍派 パー券 中抜き30人超か

事務局に知らせず裏金づくり

 元自民党参院議員の大野泰正被告(66)らが政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた事件の公判で、同党旧安倍派(清和政策研究会)による組織的な“裏金づくり”の新事実が次々と判明しています。その一つが政治資金パーティー収入の一部しか同派に納入せず「中抜き」していた議員らの実態です。少なくとも30人が関与していた疑いが明らかになりました。これらの議員は規正法違反の疑いもあり、国会での徹底的な究明が求められます。(丹田智之)


写真

(写真)旧安倍派(清和政策研究会)が2021年に開いた政治資金パーティーの様子(宮下一郎衆院議員のブログから)

 旧安倍派では所属議員に政治資金パーティー券の販売ノルマを与え、ノルマを超えて納入した分を議員側に還流(返金)する形で裏金化していました。ところが一部の議員は、ノルマ超過分を納入せず「中抜き」していました。

 しかも同派事務局に無断でした。

ノルマの分だけ

 公判(9月25日)で同派元会計責任者の松本淳一郎氏は、議員側の「中抜き」を「きちんと認識していなかった」と証言しました。

 松本氏は「ノルマを確保できれば、派閥としてはいい」と説明する一方、ノルマと同額を納入する議員に疑念を抱いたときに「何かおかしいなと思った」と振り返りました。

 新型コロナウイルスの流行時は、ノルマを例年の半分にしました。それでもノルマ分しか入金しない事務所があったといいます。

 パーティー券をノルマより多く受け取った議員の中にもノルマ分しか納入しない議員が「いました」とも松本氏は断言しています。

 2日の公判で同派元経理担当者の女性は、議員側の中抜きについて「考えていなかった」と説明。「割り当て(ノルマ分)を入れていただくことだけに集中していたので、各事務所に聞いたりはしなかった。それぞれの事務所のやり方なので…」と証言しました。

 同派ではノルマや返金の額を決める際に一覧表を作り、会長の了承を得て議員側に伝えていました。一覧表は証拠資料として東京地裁に提出されています。

 元経理担当者の証人尋問では、大野被告の弁護士がノルマとパーティー券の売り上げ状況が記された一覧表を見ながら「ざっと数えて30人は(ノルマと)同額だ」と説明しました。少なくとも30人は中抜きが疑われる形です。同派の所属議員は最大100人で、3分の1が中抜きしていた疑いがあります。

要職「影響なし」

 中抜きの総額に関しては、これまでに「5年間で少なくとも約8000万円」と報じられていました。

 これらはどう使われたのか―。証人尋問で松本氏は、議員側が裏金化したノルマ超過分の収入について「選挙なり政治活動に使ってもらう」と説明しました。

 しかし、中抜きが疑われる議員名は、いまだに公表されていません。にもかかわらず自民党の高市早苗総裁は、裏金事件に関わった議員について「人事に影響はない。しっかり働いてもらう」(4日)としています。

 実際に高市氏は、5年間で2728万円の不記載が発覚して秘書が略式起訴された萩生田光一元政調会長を幹事長代行にしました。

 自民党議員らの裏金を刑事告発してきた神戸学院大学の上脇博之教授(政治資金オンブズマン代表)は「中抜きの人数や金額について、派閥の事務局も正確に把握できていなかったことが分かってきた。国会で徹底的に調査し、真実を明らかにする必要がある。未解明の状況で事件に関与した議員を党などの要職に起用するのは、あまりにも無責任だ」と指摘しています。

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