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2025年10月13日(月)

カジノと一体・危険な夢洲 ゆがみ・破たん露呈

関西万博きょう閉幕

 大阪・関西万博が13日、184日間の会期を終え閉幕します。人類の進歩や展望を示す公衆教育の場という万博の理念をゆがめる商業主義や「いのち輝く」と掲げたテーマとも真逆のガス爆発の危険など、カジノと一体化をねらい「夢洲(ゆめしま)」で開催した問題点が次々と露呈。もっぱら人寄せイベントに終始し、「成功」どころか、「ゆがみと破たん」が際立った万博となりました。


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(写真)万博の東エントランス広場(手前)の背後で進むカジノを中核とする大阪IRの建設工事=9月13日、大阪市・夢洲

 「来場者が愛知万博を超え、運営費も黒字が見込める。子どもたちが未来を想像する機会になった」。日本国際博覧会協会の十倉雅和会長(前経団連会長)は閉幕直前の記者会見でこう胸を張ってみせました。

赤字ごまかし

 水上ショー、音楽コンサート、花火、盆踊り、全国飲食店街など人寄せイベントが目白押し。最終一般来場者は2500万人台とみられ、想定の2820万人を約300万人下回る見込みです。入場券の累計販売枚数も約2200万枚余と目標の約2300万枚に届きませんでした。

 入場券収入などで賄う運営費は230億円から280億円の黒字としていますが、警備費(約255億円)や途上国出展支援(約240億円)などが国費負担へと切り離されており、これがなければ大赤字です。ほかにも万博には会場建設費(国・府市・経済界で約2350億円)や日本館建設等費(国費最大360億円)、会場へのアクセス向上・周辺インフラ整備費(国費などで約8520億円)など巨額の事業費がかかっていますが、これらは国民・住民負担に付け回しされ、物価高騰で困窮する暮らしや営業への支援はなおざりにされたままです。

建設費未払い

 閉幕前の来場者急増で「万博成功」が叫ばれる中、放置されているのが、元請けなどから建設費が未払いになっている下請け事業者です。10カ国以上の海外館の工事に及び、被害総額は10億円以上。昼夜を分かたぬ突貫工事で開幕に間に合わせたのに、外資系の元請け企業や無許可営業の会社などが代金を払わず、「融資も受けられず、協力業者も連鎖倒産の危機にある」「被害者と家族も含め1000~2000人が路頭に迷いかねない」と悲痛な声があがっています。

 被害業者は責任の追及とともに立て替えや無利子融資を求めていますが、吉村洋文大阪府知事と国・協会等は「民民の問題」「契約当事者でないのでカネを出すことはない」と拒否。無法な事業者を監督する責任も、万博を公正に運営する責任も投げ捨てています。

 日本共産党や多くの府民、団体などは、いのちを危機にさらし、無法なカジノのために夢洲で開く万博には反対してきましたが、「いのち輝く」のスローガンに逆行するような実態は、その追及の正しさを改めて鮮明にしています。

もうけ優先 理念どこへ
いのちを危険にさらす

安全より開催を優先

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(写真)万博会場内で救急対応にあたる関係者ら=9月21日、大阪市・夢洲

 維新の松井一郎元知事の強い意向と自公政権によって、カジノと一体化をねらい大阪市・夢洲に誘致された万博。その実像は―。

 来場者や関係者はスローガンの「いのち輝く未来社会」どころかさまざまなリスクにさらされました。

 開幕前に大問題となったメタンガスについては、開幕直前の試験開催時にも着火により爆発する濃度に達している箇所があることが、日本共産党の寺本けんた守口市議のガス検知で判明。慌てた協会は通気性の高いグレーチング(金属製の網状格子ふた)に次々と交換したものの、開幕後にも爆発濃度が検知されるなど危険性がなくなったわけではありませんでした。

 ストレスのない「並ばない万博」を掲げたのに、入り口でもパビリオンでも予約サイトでも長蛇の列。長時間の待機を強いられ「ネットでもリアルでも並んでいる」との悲鳴が。夢洲は大阪市内より暑く熱中症で倒れる人が続出しましたが、医療救護施設への来所者数も熱中症患者数も一切公表せず。しかし、大阪市消防局によると9月10日までの救急搬送件数は731件、うち熱中症関連が99件もありました。

 8月13日夜には大阪メトロ中央線が故障で止まり、約3万8000人が帰宅困難となる前代未聞の事態に。適切な案内や支援も不十分なまま、1万1000人が熱帯夜の一夜を過ごさざるをえず体調不良者が相次ぎ、36人が救急搬送されました。

 貴重な渡り鳥のすみかを破壊して造った会場では、環境サイクル破壊で羽虫ユスリカだけが大量発生。会場内で、協会が指針値超えとみなしていたレジオネラ属菌が検出されても公表が遅れ、津波注意報の周知も到達予想時刻の後でした。花火の破片で負傷したとの訴えについても、後から他に3件あったと報告。バス事故も相次ぎました。いのちや安全より開催を優先する姿勢が際立ちました。

カジノと一体で開発

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(写真)大屋根リング下にも延びる入館待ちの行列=9月29日、大阪市・夢洲の万博会場内

 万博後も「夢洲開発」を続けるため、閉幕後に解体する予定だった「大屋根リング」を一部保存に変更。改修費と今後10年間の管理費だけで約55~90億円かかると試算されています。5年後のカジノ開業まで「夢洲開発」をぶちあげ、「期待」感をつなげるねらいです。サーキット場建設などが浮上していますが、「万博のレガシー(遺産)と関係ない」との声が財界人からもあがるなど、もっぱら大企業支援のために破綻した湾岸乱開発の推進に矛盾は避けられません。

 自然保護団体は絶滅危惧種の渡り鳥の重要な中継地であった夢洲の湿地が万博開発などによって大きく損なわれた現状に触れ、今後は大阪湾内の沿岸湿地の再生・創出を推進し自然再興のモデル地域としていくべきだと提言しています。

「経済効果」は限定的

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(写真)爆発濃度検知後、金網で囲われ、ふたを開けたままにされているマンホール=9月29日、大阪市・夢洲の万博会場内

 当初の2倍、2350億円に膨張した会場建設費に批判が高まり、吉村洋文府知事は「経済効果は3兆円」と言い訳してきました。

 これ自体、2820万人と設定した過大な来場者を前提に、個人向け医薬品の普及3300億円、次世代携帯の普及2200億円など、万博を契機に商品・サービスが大量に購入されるという机上の空論でした。

 関西財界系のアジア太平洋研究所は、今年度の関西の実質域内総生産(GRP)成長率は、万博工事最盛期の24年(1・1%)の4分の1の0・3%にとどまり、日本全体の予測値よりも減少幅が大きくなると推計。「万博効果」は限定・短期間にとどまり、景気の落ち込みが全国よりひどくなると分析しています。

 もともと万博工事最盛期でも万博前22年の成長率2・8%に及ばず、限定的効果しかありませんでした。万博が始まっても物価高騰のなか賃金が大きく上がらないもとで、一過性イベントで景気回復・経済成長にはつながりません。

 「経済の低迷は消費の低迷が大きな原因です。大阪経済は卸・小売業が産業全体の4分の1をしめており、府民のふところを豊かにしなければ、大阪の地域経済はよくならない」(桜田照雄・阪南大教授)と指摘された通りの結果です。

 帝国データバンクは7日、近畿6府県の上半期の倒産について、前年同期比3・1%増の1298件で4年連続増加したと発表。「倒産動向は、右肩上がりから高止まり傾向へシフトしつつある」としています。

 販売・受注不振など不況型倒産が90・4%と上半期としては18年度以来7年ぶりに90%を突破。「万博効果」はうかがえません。

危うい規制緩和固執

 吉村知事らは「万博を社会実装の実験場に」とぶちあげ、万博を国民の安全・安心を守る規制を緩和する突破口にねらいました。来場者の個人情報の利活用、健康保険のきかない先進医薬品や再生医療、「空飛ぶクルマ」の操縦・飛行規制の緩和など、60項目以上の規制緩和を関西財界とともに求めてきました。

 このうち、タクシー免許(2種免許)のない運転者を地域・期間限定で認める「日本版ライドシェア」が昨年12月から大阪府全域に拡大され、10月末まで24時間運用。しかし、運行回数は低迷し「タクシーは不足しておらずライドシェアの需要はない」(タクシー協会)と指摘されています。

 「空飛ぶクルマ」は、来場者を乗せる「商用飛行」は認められず、模擬飛行で重大故障を起こし長期間飛行停止に。「いのち輝く」どころか人々を危険にさらすのが実態です。

 性懲りもなく維新や財界は「特区」から全面解禁を求めていますが、ニーズもなく安全・安心を危うくする規制緩和に固執する姿勢が問われています。

 こうしたなか、大量に集めた来場者の個人情報を大企業などが利活用することが計画されています。

 指紋や未婚・既婚の別など不要な情報収集が問題となり削除に追い込まれましたが、大量の個人情報を収集・保有しており、人権の保護より企業のもうけのために利活用を優先する姿勢が問われています。


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