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2025年10月11日(土)

緊急アピール 学費の値上げ連鎖を食いとめるために政府は責任を果たせ

――値上げ回避の緊急予算措置と一体に、値上げ推進の文科省令を撤廃することを求める

2025年10月10日 日本共産党

 日本共産党が10日に発表した、緊急アピール「学費の値上げ連鎖を食いとめるために政府は責任を果たせ--値上げ回避の緊急予算措置と一体に、値上げ推進の文科省令を撤廃することを求める」の全文を紹介します。


 いま、国立大学で学費値上げの“連鎖”ともいうべき事態が起きようとしています。これまで首都圏で値上げが続き、今春、東京大学が2割の値上げを強行しました。この秋、埼玉大学や、首都圏以外でも名古屋工業大学、山口大学と、地方国立大学が相次いで授業料の値上げを発表する異常事態となっています。私立大学の学費値上げも進行しており、2025年度は私立大学の約2割が、初年度納付金を値上げしたと言われています(民間企業の調査)。

 日本政府は、「高等教育無償化」をめざすとしています。ところが、足元で起きているのは、国立大学の値上げが首都圏から地方にまで広がり、私立大学の値上げが進行するという無償化に逆行する事態です。

 地方国立大学での値上げが及ぼす影響は計り知れません。地方国立大は、それぞれの地域で大きな役割を果たし、高校生にとって重要な進路の希望先となっています。経済的理由から「地元の国立大学だから進学できる」という学生は少なくありません。それだけに、異常な高学費がさらに値上げされ、同じ国立大学でも格差が生まれれば、教育の機会均等が保障されなくなり、学生、高校生の学ぶ権利と将来への希望が奪われてしまいます。大学院の値上げも同じようにすすめられており、学部生の進路にとっても、日本の研究の発展にとっても重大な障害となりかねません。

 大学は、“教育の向上”などの理由とともに、大学財政の困難を理由に「安定的な収入の増加」として値上げをしようとしています。日本の高等教育予算は、OECD(経済協力開発機構)の中でも、「最低水準」であり、政府が大学予算を削ってきたことが、大学の“財政難”の最大の要因です。

 すでに異常に高い学費のもと、長時間のアルバイトや奨学金なしに大学に通えない学生が多数となっているときに、さらに学費が値上げされれば、学生生活は崩壊し、日本の大学は土台から成り立たなくなります。しかも、学生や大学人の声もまともに聞かずにすすめる非民主的な方法が横行しています。

 こうした事態を放置すれば、全国の国立大学で学費値上げの連鎖が広がりかねません。国立大学の値上げは、私立大学のさらなる値上げを広げ、日本の大学全体の学費値上げの連鎖をうみだします。

 「高等教育無償化」を公約に掲げる日本政府として、学費値上げの連鎖を食い止め、学費ゼロをめざして値下げにふみ出すための緊急措置として、以下3点を求めます。

1.値上げ回避のための緊急の予算措置をとるとともに、大学予算を抜本的に拡充すること

 学費値上げの最大の要因が、大学予算の削減にあることは、もはや明瞭です。国立大学は法人化後、1600億円以上の運営費交付金が削減され、私立大学は国からの私学助成金が経常費の1割を下回る水準におかれたままです。この間の授業料値上げの理由でも、「国からの運営費交付金は減少」し、「努力も限界を迎えている」ことなどが述べられています。

 日本共産党は、昨年の段階で緊急に学費値上げを食い止めるため、「学費値上げを止めるための緊急の予算措置を求めます」(24年11月27日)を発表しました。学費値上げを回避する緊急の手だてには、大きな予算は必要ではありません。1000億円程度で、国公私立大学、専門学校の来年度の値上げを回避することができます。緊急に予算措置をとることを求めます。

 そして、多くの国立大学が求めている運営費交付金、また私立大学への私学助成金を、物価や人件費高騰をふまえて抜本的に増額することを求めます。

2.国立大学の学費値上げの根拠となる文科省令を撤廃すること

 国立大学の学費値上げの根拠となっているのは、文部科学省が定める省令=国立大学等の授業料その他の費用に関する省令です。

 同省令は、国立大学費の標準額(第2条=53万5800円)を定めるとともに、第10条で“大学の判断で標準額の2割の範囲内なら値上げしてもよい”としています。省令が定めた値上げ上限の“2割”は合理的な根拠が示されていない無責任なものです。それにもかかわらず、現に起きている値上げでは、2割の上限いっぱいまで授業料が引き上げられています。文部科学省の定めた省令が、学費値上げを推進しているといっても過言ではありません。

 ところが、文部科学省は、大学が省令を根拠に学費を値上げしていることについて、「学費を上げるかどうかは各大学の判断だ」として、まるで自分たちには関係がないかのような態度をとっています。これは到底許されません。大学予算を削減し、大学を自ら学費値上げに追い込むようなやり方を改めて、大学予算を増やして大学を守り、学生が安心して学べるように政府の教育行政機関として責任を果たすべきです。

 省令の改定は、文部科学省の判断ですぐにできるものです。国立大学運営費交付金を抜本的に増額するとともに、国立大学の値上げを認める条項(同省令第10条)をただちに撤廃することを求めます。あわせて、留学生の授業料を上限なく値上げできるとする条項(第11条)の撤廃を求めます。

3.政府の責任で、“入学金の二重払い”をただちに解消すること

 文部科学省は、今年6月に発出した通知「私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について」で、私立大学に対して、入学金の抑制や「入学しない学生の納付する入学料に係る負担軽減」、いわゆる“入学金の二重払い”の解消を求めました。

 私立大学で平均約25万円、国立大学は約28万円という高額の入学金を払わせ、入学しなくても返金しないのはあまりに不条理です。政府として“入学金の二重払い”の解消を求める通知を出したのですから、その実施を大学任せにせず、政府の責任で予算措置を含め、必要なあらゆる措置を取ることを求めます。

 いま、学費値上げにたいして、多くの学生が値上げ反対の声をあげています。日本共産党は、こうした学生のみなさんの運動に心から連帯することを表明します。学生の学ぶ権利と大学の発展のために、政治に責任を果たすことを求め、学生、大学人、国民のみなさんとともに力を尽くします。


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