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2025年10月10日(金)

主張

中谷防衛相の暴言

沖縄だけではない重大な危険

 中谷元・防衛相が自衛隊の訓練に抗議する沖縄県民の活動を「過激な抗議、妨害活動」と非難していることに批判が広がっています。沖縄地元紙は「憲法が保障する言論の自由の否定」と指摘し、法律家121人は3日、言論封殺だと抗議する声明を発表しました。

■基地トップが恫喝

 大きな問題になったのは8月、陸上自衛隊の宮古島駐屯地司令の恫喝(どうかつ)です。徒歩訓練中、公共駐車場で休憩していた自衛隊員に「きれいな朝日に迷彩服は似合わない」と拡声器で訴えた市民団体に「許可を取って来い」などと怒声をあげて退去を迫りました。 この司令は後日、批判にさらされ謝罪しましたが、処分はなし。中谷防衛相は司令の行為について「もっと節度をもった形でやるべきだった」としながら、「抗議行動をやめていただくため接触すること自体はなんら問題ない」と開き直りました。

 9月に行われた日米共同演習では、宮古島での抗議行動を受け、自衛隊車両を陸揚げせず予定を一部変更する事例が起きました。

 中谷防衛相は9月19日、記者会見冒頭、みずから発言し、市民の行動について「過度な抗議行動」「妨害行為」などと非難しました。

 「沖縄全島エイサーまつり」(9月12~14日)では、陸上自衛隊第15旅団の出演取りやめを求める市民に対し、自民県議らが「職業差別」と非難、自衛隊への「差別的な風潮を改め」るよう求める県議会決議を強行しました。

 沖縄県民の抗議行動の根底にある平和を希求する願いは沖縄戦の筆舌に尽くしがたい体験から生まれています。

 しかし沖縄の自衛隊は、沖縄戦で県民に多大な犠牲を強いた旧日本軍第32軍を美化してきました。第32軍の牛島満司令官らを弔う黎明(れいめい)の塔への参拝も長年おこなわれてきました。第15旅団のホームページには、沖縄戦を美化する牛島司令官の「辞世の句」がふたたび掲載されています。旧軍戦没者「慰霊」祭を自衛隊が支援し、ラッパ隊、儀仗(ぎじょう)隊も動員し弔銃発射もしました。

 いま政府が「台湾有事」を想定し、南西諸島でミサイル配備を強行、演習を日常化し、住民の「強制疎開」計画がすすむ動きに、県民の不安と危機感が高まっているのです。

 「オール沖縄」選出国会議員で構成する「うりずんの会」は防衛相の暴言撤回を要請、「平和を希求する強い願いから抗議行動が行われている。憲法が保障する表現の自由を侵害する」と抗議しました。

■全国の運動に影響

 法律家の声明は中谷防衛相や自民県議の動きについて「『言論封殺』に道を開きかねない極めて危険な言動」と批判、撤回を求めています。

 「今回は沖縄での抗議活動および反対の意思表明が対象になっているが、これらを『沖縄の問題』として放置すれば、日本全国の反戦等の言動も『妨害活動』『職業差別』等として封じられ、『表現の自由』『国民主権』が危機に陥る危険性がある」と警告しています。

 防衛省、自衛隊が沖縄県民の声を真摯(しんし)に聞き、姿勢を改めることを求めます。


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