2025年10月9日(木)
主張
高市新総裁の路線
安倍政治回帰での危険と矛盾
新総裁に高市早苗氏を選んだ自民党は、女性初の総裁誕生でイメージ刷新を図るとともに、参院選で失ったとされる「岩盤保守層」の支持の取り戻しに期待をかけています。しかし、高市氏の時代逆行の政治姿勢への国民や近隣諸国の警戒感は強く、矛盾は激化せざるをえません。
■古い自民党のまま
「自民党の景色を少し変えられるのではないか」―。高市氏は、新総裁就任会見でこう述べました。しかし、最初に行った党執行部人事では、唯一派閥を解消せず、総裁選で後ろ盾となった麻生太郎最高顧問を副総裁にすえ、麻生派の議員を重用。さらに、旧安倍派“5人衆”の一人で、裏金問題で政策秘書が略式起訴されたばかりの萩生田光一衆院議員を幹事長代行に就けました。
裏金問題を決着ずみとし、「論功行賞」でポストを配分する派閥政治の復活では、変わるどころか古い景色へ逆戻りです。世論調査(「共同」、4~6日実施)では、総裁選で派閥や旧派閥の影響を「感じた」「ある程度感じた」は81%、裏金事件に関与した議員の起用に「反対」が78%にのぼりました。
政治路線でも自民党政治の二つのゆがみをいっそう深めようとしています。
高市氏は安倍晋三元首相の継承者を自任し、金融緩和などの経済政策「アベノミクス」を引き継いで大企業を後押しする姿勢です。安倍政権下では大企業や富裕層が利益を増やす一方、賃金は上がらず、経済は低迷しました。その反省もなく、同じことを繰り返しても国民の支持は得られません。
安保・外交政策でも「日米同盟絶対」の軍事一辺倒で、改憲志向も踏襲しています。会見では、これまで行ってきた靖国神社への参拝について「適時適切に判断する」と主張。侵略戦争と植民地支配を美化する安倍氏の歴史観も継承しています。
結局、国民の厳しい審判を受けながら、自民党は破綻した路線を変えられず、国民の不満をそらすために排外主義的傾向を強めています。
高市氏は「スパイ防止法」制定や外国人問題での規制強化などを打ち出しています。高市氏のもとに改憲勢力や極右・排外主義勢力が結びつき、より危険な政治へと向かう恐れがあります。
■反動的打開の脆さ
一方で、自民党が時代に逆行して行き詰まりの反動的打開を図ろうとすればするほど国民との矛盾は深まります。
高市氏は国民民主党との連携を模索しています。しかし、自民党への審判に反して連立に参加し、政権延命に手をかすことは国民の理解が得られません。長年、自民党を支えてきた公明党も、裏金問題への国民の批判を意識して連立に慎重なポーズをとるなど、国民との矛盾を抱える高市氏の政治路線の脆(もろ)さが早くも露呈しています。
日本共産党は、反動ブロックの危険に対決する国民的・民主的共同を呼びかけています。危険な逆流が生まれかねない政治情勢のもと、自民党政治と対決し、転換を迫ってきた日本共産党の役割がますます重要となっています。