2025年10月8日(水)
主張
医療危機の深刻化
崩壊止める措置 直ちに着手を
大学病院や自治体病院など日本の医療の中核を担う病院が「過去最大の危機」と悲痛な声をあげています。大学病院は高度な医療や研究、医師育成を担い、地域の病院に医師を派遣しています。自治体病院は高度医療のほか、採算性が難しい僻地(へきち)医療を支えます。これらの病院がつぶれれば国民の医療が崩壊します。
■機器の更新できず
国立大学病院長会議の大鳥精司会長(千葉大学医学部付属病院長)は3日の会見で「新たな医療機器が買えない。98%の機器が更新できない状況。そういう点では医療は破綻している」と訴えました。
国立大学病院全体で2025年度の経常収支の赤字は400億円超と前年度の1・4倍の見通しで、「CT(画像診断装置)などは壊れて検査できないことがいつ起きてもおかしくない」(藤井靖久・東京科学大学病院長)という実情です。
公・私立を含めた全国の大学病院で「本来の機能の維持が困難」「このままでは病院閉鎖による地域医療崩壊となり国民の健康や福祉に影響が出る」(全国医学部長病院長会議)事態です。水光熱費は22~24年度で約9%減で必死の節約の跡がうかがえます。
自治体病院では86%が経常収支が赤字(24年度)です。とくに感染症指定医療機関、災害拠点病院、救急救命センター、集中治療室のある病院などでは9割以上が赤字です。
危機の根本はこの間、薬価を含む診療報酬(医療の公定価格)のマイナス改定が続いてきたことです。さらに医薬品や診療材料費の高騰、人件費の上昇が拍車をかけています。医療従事者の賃金は全産業平均に届かず離職を招いており賃上げが必要ですが診療報酬で補填(ほてん)できていません。
関係者が共通に求めるのは物価高騰や賃上げを踏まえた診療報酬の改定です。次回改定は26年度ですが、それを待たずに引き上げることが必要です。自治体病院は地方交付税での措置も求めています。
■3党合意破棄せよ
高市早苗自民党新総裁は、就任後の4日の会見で病院の赤字に言及し、次回の報酬改定を「待っていられない状況」「医療機関がどんどん倒産していくとなると大変」とし、補正予算での手当てを検討するとのべました。
一方で自公維3党は国民医療費の4兆円削減で合意しています。それには▽診療報酬を減らす▽病院・病床を減らす▽患者負担を増やし受診を抑制する▽保険のきく医療を狭める―などをせざるをえません。病院経営をさらに困難にし、病気への備えを「自己責任」にする方向です。高市氏には、自公維合意を破棄するのかが直ちに問われます。
厚労省の資料によれば、00年度以降、医療機関の延べ患者数は減少傾向が続いています。“高齢者のサロンになっている”などの言説に根拠がないことを示しています。
日本共産党は緊急に国費を5千億円投入し診療報酬の基本部分の引き上げを求めます。保険料や患者負担を増やさないために大企業や富裕層への優遇税制をただし財源をつくるべきです。幅広い医療関係者と共同を広げ医療破壊を止めなければなりません。