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2025年10月6日(月)

主張

DNA鑑定の不正

証拠の偽造は重大 徹底検証を

 「究極の個人情報」と言われるDNA型の鑑定は刑事事件の捜査、裁判でいま証拠として重要な位置を占めます。しかし、誤った鑑定や不正を疑わせる鑑定で数々の冤罪(えんざい)事件が起きています。2005年からは被疑者や遺留資料のDNA型を蓄積するデータベースも運用されています。

 DNA型鑑定の不正は証拠の偽造であり、真犯人発見を妨げ、冤罪を招く、人権にかかわるゆるがせにできない重大問題です。

 佐賀県警の科学捜査研究所の技術職員が17年以降、7年以上にわたり不正を行っていたことが明るみにでました。担当した632件のうち130件で、鑑定せずにしたように装う、日付や数値・分析結果を改ざんする、ガーゼ片など鑑定資料の紛失隠蔽(いんぺい)のため新品に入れ替える、などの不正を行っていたといいます。

 不正発覚後、資料が残っている124件を再鑑定したところ当初と違う結果が出たのが8件あり、殺人未遂や不同意わいせつなどで16件の鑑定結果が佐賀地検に送られていました。

■捜査側だけで調査

 しかし県警は捜査・公判への影響はなかったとして第三者機関による調査・検証を拒否しています。地検も捜査・公判に影響なかったとします。しかし、改ざんされた数値をもとにしながら、捜査・取り調べにも影響はなかったというのは到底通用しません。

 虚偽の証拠は、それ自体で裁判のやり直し(再審)の直接の理由になるものです。証拠偽造という重大問題を捜査機関の内部調査で済ますことは許されません。長年の不正がなぜ見逃されたのか、チェックが働いていないなら不正・ずさんな鑑定が全国で常態化していないのか―一職員の問題に矮小(わいしょう)化できません。

 佐賀県弁護士会の会長声明は、内部調査だけで済ませること自体、不正行為の重大性を見誤るもので適正手続き順守の意識の低さを表していると厳しく批判しています。

■求められる法整備

 これは佐賀県警だけでなく警察庁、最高検察庁、法務省にも問われます。警察庁は2日、佐賀県警に特別監察を行い、結果を踏まえ他の都道府県警にも監察を行うとしました。

 しかし今回の事態は従来の内部監察で証拠偽造を防げなかったことを示します。警察組織の構造問題として第三者機関による徹底検証を行い再発防止を図るべきです。警察組織から独立した鑑定機関も検討課題となりえます。

 DNA型資料の保管や、無罪になった人のデータの抹消などの取り扱いは法律がなく、警察の内部規則に任されています。鑑定資料が廃棄されるなどの不適切な扱いで再鑑定ができず、再捜査や冤罪を晴らすうえで大きな妨げになる事例も起きています。

 日本弁護士連合会は鑑定資料の適切な管理・保管を義務付ける法整備を求めてきました。DNA型データベースを規則でなく法律で運用することも求め、DNA型鑑定の不正を防ぎ鑑定の品質保証・信頼性を確保するための基準制定や第三者機関による監督も求めてきました。不正が明らかになったいま、それらに取り組む必要があります。


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