2025年10月5日(日)
主張
総裁選おわる
変われぬ自民党の行き詰まり
自民党総裁選がようやくおわり、高市早苗前経済安全保障担当相が新総裁に選ばれました。今回、自民党は総裁選のテーマに「#変われ自民党」を掲げ、「解党的出直し」を“演出”するはずでした。しかし、総裁選がはじまると、「解党」どころか「党内融和」を訴える内向きの議論ばかり。浮き彫りになったのは、衆参両院で与党過半数割れの審判を突きつけられてもなお「変われぬ自民党」の行き詰まった姿です。
■活路狙う連立の道
総裁選候補の政策はみな横並びで、パレスチナ問題をはじめ日本と世界が直面する課題に向き合う姿は全くありませんでした。
喫緊の課題である物価高対策では、多くの国民が求める消費税減税にどの候補も後ろ向きでした。高市氏は「まずは物価高対策」と述べました。しかし、食料品の消費税率ゼロといっていた主張を総裁選では「党の大勢の意見にはならなかった」と撤回、総裁選出後の会見でも改めて否定しました。裏金議員の起用も容認し、選択的夫婦別姓にも反対の姿勢を示すなど、古い自民党政治そのものです。
一方で、高市氏の“改憲・タカ派”ぶりは総裁選でも随所に顔を見せています。右派・保守層に迎合し、「奈良の鹿をけり上げるとんでもない人がいる」と外国人観光客への憎悪をあおる場面もありました。「日米同盟強化」を唱え、「絶対に日本の領土と国民を守り抜く」と大軍拡推進を表明。「自衛隊の存在を憲法にきちんと書き込む」と改憲にも強い意欲を示しています。
さらに、高市氏が他の候補と同様に、政権の延命策として強い意欲を示しているのが連立政権の枠組み拡大です。
高市氏は「安定した政治でなければ重い課題が解決できない。連立拡大を目指す。首班指名までにできるように精いっぱい努力したい」と述べ、「年収の壁の引き上げ」「『スパイ防止法』の制定に着手」なども主要政策に掲げています。
■政治空白許されず
一部野党からは、連立協議を打診された場合、「応じるのは当然だ」(日本維新の会の吉村洋文代表)との声もあがっています。高市氏が新総裁となったことで、アベノミクス継続や、弱肉強食の新自由主義・外国人規制強化の排外主義の推進、改憲議論加速などで、一部野党と連携をさぐる動きがより強まることも危惧されます。
自民党が党内事情を優先させ、国民不在の総裁選に明け暮れたために、国民の審判が下された参院選から2カ月半が過ぎても、民意を踏まえた国会審議がまともに行われていません。さらに、自民党は連立の枠組み拡大の時間確保のため、首相を選ぶ臨時国会の召集を今月中旬まで先送りしようとしています。政権の都合で国民生活をこれ以上ないがしろにすることは許されません。ただちに国会を開き、物価対策など喫緊の課題を話しあうべきです。
一部野党との密室・個別の政策協議や連立協議に時間を費やすのではなく、国民の前で堂々と国民要求実現のための議論をすべきです。