2025年10月4日(土)
きょうの潮流
食べることは生きること。どんなに悲しくても、人は食べなければなりません。▼大切な存在を失った人を癒やす、グリーフケア。病気で子どもを亡くした親たちは、ケアではなく分かち合いを望んで、グリーフシェアクッキングが始まりました。今年で3年です▼講師は坂上和子さん。コロナ禍の下、調理師学校に通った経験が生きています。手を動かすうちにだんだん表情が柔らかくなり、おしゃべりもひっきりなしになると話します。一緒に作った物を一緒に味わうひととき。同じ体験をした親と出会える大切な場となっています▼そんな試みをまとめた冊子は、親の思いであふれています。家ではご飯を作る気も食べる気もしなかったけれど、日常の生活が感じられた。「生きていることを実感できる、子どもたちが一緒にいるっていう感覚を味わえる場所」という人も。何度も参加した親は「笑ってもいいのかなって思えるようになりました」と▼坂上さんは35年前、入院中の乳幼児と遊ぶボランティアを保育士らと始めました。その後も付き添う親のちょっとした息抜きや手作り弁当の提供、きょうだいの託児など「こんな助けがあったら」という気持ちをくみとって支援してきました。コロナ禍で激務を続ける現場には「医療者応援サラダ」を届けました▼35年の活動で学んだのは、小児病棟には本当にたくさんの手が必要だということでした。「ボランティアがもっと参加しやすくなるしくみが、病院にほしい」。坂上さんの願いです。