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2025年10月3日(金)

主張

多子世帯の学費支援

不合理な運用改め広く対象に

 2025年度から始まった多子世帯向けの大学等無償化制度(修学支援新制度)の支援対象が4月にさかのぼって拡大されることになりました。文部科学省の不手際によって支援から排除されていた世帯が救済されます。同時に重大な欠陥がまだ残っており、早急な改善が必要です。

■想定の不備が原因

 同制度は、基準日(25年度前期は23年12月31日)の住民税情報をもとに3人以上の子どもを扶養している世帯を認定し、大学などの入学金と授業料を支援します。国立大学は入学金28万円、授業料54万円、私立大学は入学金26万円、授業料70万円が上限です。

 問題となったのは基準日以降に扶養状況が変わった場合です。基準日から入学までは1年以上あり、その間に扶養状況が変わることは普通にあることです。

 ところが文科省は、出産などで子どもの数が増えた場合は救済の仕組みを整えていたものの、保護者の事情で扶養状況に変更が生じる場合についてはまともに想定していなかったのです。

 そのため、保護者の死去や離婚、配偶者の暴力からの避難などで基準日以降に扶養状況に変更が生じたことで、支援対象から排除される事例が全国で発生しています。

 「子どもを3人以上扶養しているのになぜ支援を受けられないのか」「中退も検討しなければならない」など、切迫した訴えが日本共産党や本紙に寄せられています。

 文科省は9月、事態を無視できなくなり、基準日以降に「死別・離婚・暴力等からの避難」などで扶養状況に変更が生じた世帯について4月にさかのぼって支援対象とすると全国の大学などに通知しました。通知を出したことは一歩前進ですが、問題解決にはほど遠い状況です。

 基準日以前に離婚した世帯では今回の対象拡大でも救済されない例がでています。文科省は、あくまで基準日以降に変更事由が生じた世帯が対象だからだといいます。

■区別なく無償化へ

 さらに、今年4月以降に扶養状況に変更が生じた世帯も対象になりません。扶養者となっていた父親が5月に急逝して扶養者が母親に変わったことで支援を受けられなくなった事例も生じています。こうした世帯は排除されたままです。家族の急逝によって家計だけでなく精神的にも落ち込んでいる遺族に追い打ちをかける非情な対応です。

 日本共産党の吉良よし子参院議員の聞き取りに対し、文科省は年度開始から支援の審査結果が出るまでの期間を「制度の穴」と認めました。

 基準日などで対象者を締め出す不合理な運用を一刻も早く改め、子どもの扶養の実態に合わせて幅広く支援対象とすべきです。

 問題の根底には、学費免除の対象を多子世帯などに狭く限定し、高等教育全体の無償化に背を向ける自公政権の姿勢があります。一定の基準で支援対象を線引きしたことが、少しでも基準から外れた世帯を支援から排除する運用の原因となっています。日本も批准する国際人権規約が定める高等教育の無償化実現へ足を踏み出すべきです。


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