2025年7月6日(日)
きょうの潮流
近寄ってはならない神聖な島。その名には、そういう意味が込められていると、古老たちはいいます▼神々の島と呼ばれる、悪石島です。屋久島と奄美大島の間に浮かぶトカラ列島の一つで、点在する島々は昔から沖縄から本州につながる「道の島」に。琉球文化圏とヤマト文化圏の境目で特有の文化が残っています▼行政区は「日本一長い村」、鹿児島県十島村。いまそこで地震活動が活発化し、悪石島では3日に震度6弱を観測。たびたびの揺れで住民の不安は募り、島外への避難も始まっています。なかには牛を置いてはいけないと苦悩する畜産農家も▼もともとトカラ列島は火山でできた島々で、地下にあるマグマが群発地震の原動力になっている、と専門家は指摘します。鹿児島では新燃岳の噴火もあり、警戒態勢とともに避難先の確保も必要でしょう▼今回の地震をめぐっては、7月5日に日本で大災難が起きるとか、トカラで地震が増えると大きな災害が起こるといった予言めいた風説が広がりました。気象庁は、デマであるとして「まったくの偶然で科学的根拠はない」と。専門家も「別の災害との関係はない」と話します。災害時の虚偽情報は不安と混乱をあおるだけです▼悪石島には、第2次大戦末期に沖合で米軍に撃沈された対馬丸の追悼碑があります。沖縄から疎開し犠牲となった多くの子どもたちを供養するために。敗戦後は米軍政下におかれたトカラ列島。平和を希求してきた島々に、平穏なくらしが早くもどることを。