2025年7月6日(日)
シリーズ 参院選勝利へ 基本政策から
米国言いなりでは暮らし破たん
「軍事費GDP3.5%=21兆円」要求 食料安定供給費の17倍
大軍拡に正面から反対 共産党
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「いつまでもアメリカ言いなりでいいのか」が参院選の大争点になっています。最大の問題はトランプ米政権が押しつけている途方もない大軍拡要求です。自公政権のままでは、日本は20兆円を超える軍事費を負担させられます。
米国は北大西洋条約機構(NATO)加盟国に国内総生産(GDP)比5%、オーストラリアに3・5%の軍事費を要求。日本に対しては、コルビー米国防次官が3月、米議会で「できるだけ早く3%以上に」と証言したのに続き、6月には「3・5%」を要求したと報じられました(英紙フィナンシャル・タイムズ6月22日付)。なぜ「3・5%」か。NATOの場合、GDP比5%のうち、3・5%を「中核的な防衛費」=いわゆる国防予算としており、これを基準にしているとみられます。
![]() ![]() (写真)「富士総合火力演習」で離島沿岸部での戦闘を想定した訓練=6月8日、静岡県御殿場市 |
日本政府は2022年、「すべての同盟国は軍事費をGDP比2%に」という米国の要求に応じ、27年度までのわずか5年で軍事費を一気に2倍化(GDP比2%=11兆円)にする方針を決定。25年度予算では、すでに文教関係予算(4・2兆円)の2倍超となる8・7兆円を計上しました。これが「3・5%」になったらどうなるか。24年度のGDPを基準にした場合、約21兆円になります。「医療費12兆円を丸ごとのみ込まなければ到達できない」(日本共産党の田村智子委員長、3日の参院選第一声)途方もない金額です。25年度予算と比較すると、文教関係費の約5・2倍、食料安定供給費の約17倍に相当します。
ところが石破茂首相は、「(軍事費を)増額していくのは、当然の国の責任だ」と強弁(2日、日本記者クラブの党首討論)。このまま自公政権が続けば、参院選後には暮らし切り捨ての大軍拡が待っています。参院選で自公を少数に追い込み、大軍拡に正面から反対している日本共産党の前進で、新しい政治を切り開くことが不可欠です。
NATO加盟国のスペインでは、社会労働党と左派連合「スマール」が連立政権を組んでいます。スマールは当初から、政府が推進していた軍拡路線を厳しく批判し、トランプ氏の軍拡要求にも「連立離脱も辞さない」と強い姿勢で臨みました。反軍拡の市民運動も起こり、政府はGDP比5%の軍拡拒否に踏み切ったのです。政治が変われば、大軍拡をやめさせることは可能です。
常軌逸した米国言いなり 自主自立の平和外交こそ
イスラエルに続き、米国がイランの核施設に先制攻撃を行う無法行為の横行で暴力の連鎖が世界を覆うなか、米国言いなりの外交を続けてよいのかが問われています。ところが日本政府は、国際法違反を犯す米国を正当化。常軌を逸した米国言いなりです。
イラン攻撃 二重基準で支持
イスラエルがイランの核施設を先制攻撃した6月13日(日本時間同日)、岩屋毅外相は「到底容認できない、極めて遺憾で強く非難」すると表明。ところが同21日(日本時間22日)にイスラエルの求めに応じてトランプ米大統領がイランの地下核施設を先制攻撃した際は一転、「イランの核兵器保有を阻止するという決意を示したもの」だとして容認し、ダブルスタンダード(二重基準)の態度をとりました。
政府の米国言いなりの二重基準外交は、ウクライナを侵略したロシアを「明確な国際法違反」と非難しながら、パレスチナ・ガザ地区への空爆で市民を虐殺するイスラエルとそれを支援する米国を非難しないことにも表れています。
日本共産党の田村智子委員長は7月1日のTBS系番組「news23」の党首討論で、米国を批判しない石破茂首相の姿勢を真正面から追及しました。
これに対し石破茂首相は「イラン・イスラエル間で停戦の努力に汗をかいてきたのは、どこの国か」と色をなして反論し、米国を全面擁護。さらに、石油の9割を中東に頼る日本が「(米国に)負担を負わせ、自分たちは利益だとそんな話にはならない」などと述べ、先制攻撃の違法性については一切語らず、米国によるイラン攻撃支持を当然視しました。維新、参政両党もトランプ政権のイラン攻撃を「評価」するという立場です。
さらに、イランへの攻撃は広島・長崎への原爆投下と同じで、「あれが戦争を終わらせた」と被爆者を冒涜(ぼうとく)するトランプ大統領の暴言にも石破首相は抗議もせず、米を前に唯一の戦争被爆国としての立場さえ投げ捨てる異常な姿勢を示しました。
田村委員長は米のイラン攻撃は国際法違反だと明確に批判したうえで、「日本政府は国際法、国連憲章の立場にしっかり立って、こうした違法な攻撃は許されないという立場を貫くべきだ」と訴えました。(6月30日、テレビ朝日系番組「報道ステーション」)
トランプ関税 農業犠牲許すな
「トランプ関税」をめぐる日米協議も重要テーマです。日本政府は、6月にカナダで開かれた主要7カ国(G7)首脳会議に併せて行った日米首脳会談で決着を目指していましたが、合意できませんでした。決着の時期を含め今後の見通しは示していません。
トランプ氏は関税上乗せ分14%の延期期限を7月9日としています。上乗せされて基本関税が24%になれば日本経済への影響は深刻です。日本政府は自動車関税に重点を置いて交渉に臨んでいます。
期限が迫る中、トランプ氏は日本への圧力を強めています。1日には「日本はとても強硬だ」と不満を示し、「30%か35%、われわれが決める数字を(関税を)払ってもらう」と脅しました。特に米国製農産物の輸入拡大を迫っており、6月30日に自身のSNSに「日本はわれわれのコメを受け取ろうとしない」と投稿しました。
第1次トランプ政権期の日米貿易交渉(2018~20年)では、米側は自動車関税の引き上げで脅して、牛肉や豚肉、乳製品、ワインなどの関税を削減・撤廃させました。今回も同様に、脅しに屈して農業を差し出すことが予想されます。さらに、戦闘機など米国製兵器を日本が“爆買い”する案を提示していると報じられています。米通商代表部(USTR)で日韓担当の代表補を務めたマイケル・ビーマン氏は「日本国民にとって良くない」交渉内容が出てくるだろうとし「合意は参院選後だろう」との見方を示しました。道理なきトランプ氏の要求に屈するのは許されません。
米国言いなりの大軍拡にきっぱり反対し、自主自立の平和外交を具体的に提言しているのは日本共産党だけです。志位和夫議長は4月、日中友好議連の一員として訪中し、中国に言うべきことを言いながら互いの関係を前向きに打開する姿勢を示しました。共産党の議席こそ平和への道です。
世界で高まる米国への不信感
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米国への不信感の広がりが世論調査で示されています。「読売」の調査(6月27~29日実施)では、米国を「信頼していない」と回答した人は計68%と、昨年11月より13ポイント増加。「信頼する」は22%(同12ポイント減)にすぎませんでした。
世論調査会社「イプソス」が29カ国で行った調査(3~4月)では、米国が世界に肯定的な影響を与えるとの回答は、各国平均で46%と、トランプ大統領就任前の調査(昨年9月)より13ポイント減少。各国で軒並み低下しており、特に欧州や豪州、韓国など米国の同盟国では20ポイント前後も下がりました(グラフ)。国際的に信頼が落ちているトランプ政権に日本政府は追従するのか―。「米国言いなり」政治からの脱却は、国民的課題です。