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2025年7月5日(土)

きょうの潮流

 「天は裂け、地は燃え、人は死んだ」。井伏鱒二『黒い雨』は、広島の被爆の惨害をこう表現しました。広島市外でも原爆投下直後に降った「黒い雨」にうたれただけで、何年もたってから原爆症を発症する事実と不安を描いています▼本作発表は1965年。「黒い雨」の被害を世に知らしめました。筆者も学生時代に読み、未曽有の原爆被害を教えられたものです。しかし「黒い雨」を浴びた被爆者たちの多くは国からの支援を得られず、ずっと放置されたままでした▼今月11日、12日に広島市内のアステールプラザで上演される、劇団ハトノスの「Pica(ピカ)」は「黒い雨」被爆者たちの苦しみと闘いを描きます。被爆者手帳の交付を求める「黒い雨」訴訟の原告は作中でこう語ります▼「黒い雨の問題ってね、貧乏との闘いでもあるけえねぇ。病気で十分働けんくなったらお金も無くなる…国が勝手に戦争をして、病気だらけの人生でほっとかれて…死ぬしかないな思っても仕方ないですよ」▼作・演出の青木文太朗さんは広島出身の30歳。原爆の記憶をテーマに東京で演劇を続けてきました。「この春、『黒い雨』原告団の方から『私たちの苦しみをもっと表現してほしい』と言われました。初めての広島公演で緊張しています」と話します▼「黒い雨」訴訟は2021年勝訴が確定。しかし国が新たな線引きを設けたため、第2次訴訟が始まりました。長崎でも同種の訴訟が続いています。被爆者が全員救済されるまで闘いは終わりません。


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