2025年7月2日(水)
主張
元政府高官の提言
自衛隊に「核共有」求める暴論
「台湾有事」を想定し、自衛隊と米軍が核兵器を共同運用する「核共有」を元国家安全保障局次長や元自衛隊統合幕僚長らが提言しています。背景には自衛隊を米軍の「核戦争態勢」に組み込む危険な軍事一体化がすすんでいる現実があります。唯一の戦争被爆国・日本で、自衛隊を核兵器使用にかかわらせるなど絶対に許されません。
■非核三原則の変更
提言は、自衛隊の敵基地攻撃は反撃を招き、「敵方が核兵器使用へと事態をエスカレーションさせるリスクがある」と指摘。その対処のため、「日米共同のエスカレーション管理が必要」であり、「いつ、どこで、どういう状況で、何を目的としつつ、…何を目標にして、どの核兵器を用いるのか等」を調整しておく必要があると強調しています。
そのために核兵器を運用・維持・管理する米軍部隊に自衛官を派遣し専門家を育成すること、エスカレーションの各段階における米国の核戦力運用への自衛隊の支援など日米共同作戦の協議を提案しています。
自衛隊による核運用協力への貢献として、米爆撃機の護衛、原潜の支援をあげ、将来的には航空自衛隊F35Aを活用した核兵器の運用も検討すべきだとしています。
非核三原則の「持ち込ませず」については、「台湾有事において、中国を打撃できる米陸・海・空軍の核搭載の装備を日本に配備または寄港させられないことを意味しており、米国の拡大核抑止の有効性を低下させる」とのべ、変更を求めています。
岸田文雄首相とバイデン米大統領との日米首脳会談(2024年4月)は「日本の防衛力によって増進される米国の拡大抑止を引き続き強化することの決定的な重要性」を確認しました。
これを受け、拡大抑止に関する初の閣僚級会合をへて、同年12月には日米「拡大抑止ガイドライン」が作成されました。内容は公表されていませんが、「有事の際の米国の核使用について日本と意思疎通するとの内容が盛り込まれた」(「読売」12月29日付)と報じられています。
米軍の核兵器の使用に日本が直接、かかわる指針を公然とつくったのです。
「拡大抑止」についての日米協議の場がつくられただけでなく、現実に自衛隊と核兵器搭載可能な米軍部隊との共同運用がすすんでいます。
米B52戦略爆撃機と航空自衛隊機の共同訓練が東シナ海、九州・沖縄周辺を中心に常態化しています。共同訓練を重ねてきた米軍三沢基地のF16(36機)はステルス性能を高めたF35A(48機)に「近代化」されますが、同機も核爆弾を搭載できます。
■危険な道許さない
唯一の戦争被爆国でありながら日本政府は核兵器禁止条約に加わらないだけでなく、3月に開かれた第3回締約国会議にオブザーバー参加すらしませんでした。この背景に、核兵器使用さえ視野に入れる日米軍事同盟の危険な展開があります。
被爆80年。被爆国民の願いに反した危険な道をすすむ自民政治に審判を下さなければなりません。