2025年7月2日(水)
きょうの潮流
あの日 大地揺れ 津波押し寄せ 山崩れ 家倒れ 道は裂けた 失った哀しみは 今も消えないけど 時が過ぎ日は移り 海に赤い陽(ひ)が沈む 静かに暮れなずむ 私の故郷 ここで生きたい 朱鷺(とき)降り立つ 能登半島▼地震被災者共同支援センターの事務局長、黒梅明さんがつくった詞です。かつて日本に生息していた野生のトキ。いまは新潟の佐渡で中国から贈られたトキの人工繁殖と野外への放鳥が進められ、来年は能登地域でも放鳥が予定されています▼本州最後の生息地だった能登。そこにトキが再び戻ってくることが、復興への希望に結びつけば…。そんな思いを込めて「朱鷺が舞う」と題詞しました。豊かな自然や文化、人びとの日常やまちの風景を織り込みながら▼昨年元日の地震から1年半がたちましたが、豪雨被害も重なり復興への道のりは険しい。いまも災害関連死は増え続け、奥能登の人口は1割以上も減りました。子育て世帯が離れ存続さえ危ぶまれている地区も▼くらしの再建や、ついのすみかをどうするか。苦悩する被災者に寄り添った、手厚く継続的な支援が求められます。いまだ復旧のめどさえたたない山あいの集落、更地が広がる光景は、復興を自治体任せにしている国の冷たい姿勢を物語っています▼いまも支援センターで活動を続けている黒梅さん。先の詞に曲をつけたいと作曲者の出現を待ち望んでいます。「能登が好きです あなたと生きます 朱鷺舞い上がる 能登半島 永遠にはばたけ 能登半島」