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2025年6月30日(月)

軍事費5% 対象外に

NATO首脳会議でスペイン

閣内左派・市民「生活優先を」

 【ハーグ=吉本博美】スペイン政府は北大西洋条約機構(NATO)首脳会議(24~25日、オランダ・ハーグ)で、軍事費を国内総生産(GDP)比で5%とする加盟国の新目標から自国を対象外とすることで合意しました。背景には軍拡よりも暮らしを優先すべきだという、閣内左派からの強い圧力と市民の運動がありました。


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(写真)軍拡に反対してデモ行進する人々=8日、マドリード(市民団体「反再軍備・軍事化集会」のXから)

 スペイン政府は、NATOとの協議で軍事費目標をGDP比2・1%とすることを確認。同国のサンチェス首相は首脳会議前に、5%という多大な目標はスペイン国内に多大な影響が出るとして、「不合理だ」「われわれは犠牲を払う選択はしない」と表明していました。

「主権への攻撃」

 NATO加盟国の従来の軍事費目標はGDP比2%。しかしトランプ米大統領が加盟国全体に対し、米国並みの公平な負担をすべきだとして、GDP比で軍事費5%を強く要求しました。ハーグでの首脳宣言に反映される形で、加盟国は2035年までに軍事費5%の達成を目指すことに。そうした中で反旗を翻すスペイン政府の対応に、欧州のメディアや平和団体の注目が集まりました。

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(写真)統一左翼のロドリゲス欧州担当者(本人提供)

 サンチェス氏率いる社会労働党は、左派連合「スマール」と連立政権を組んでいます。スマールを構成する統一左翼の国際部門ジョン・ロドリゲス欧州担当者は、米国側の要求を「欧州諸国の主権に対する直接攻撃だ」と指摘。「私たちは米国の軍事産業複合体への支援を継続しないことを決意し、軍事費5%という強制拠出を拒否している」と話します。

 この間スマールは、サンチェス氏自身が表明していた軍拡路線にも強く反対していました。スペインの大手紙パイスは、サンチェス氏が軍事費5%への反対を表明したのは「政治的生き残りのため」だったと指摘します。

 欧州連合(EU)が3月に発表した大軍拡路線「再軍備計画」を受けて、サンチェス氏は4月、年内に軍事費を105億ユーロ(約1兆7000億円)増額し、GDP比で約1・3%から2%にすると発表。国会審議を経ず、さらに連立与党スマールの反対も押し切っての独断でした。

 スマールは、軍事費増額は社会保障、教育、気候危機対策を犠牲にすると猛抗議。さらにトランプ氏提案の軍事費5%はもってのほかだとして、連立離脱し政権崩壊させると揺さぶりをかけました。スペイン国内では反軍拡の市民抗議も起こりました。

 サンチェス氏率いる社会労働党は、党関係者の汚職が発覚し対応に追われる時期でもあったことから、支持率と政権維持のために「軍拡競争には加わらない」と表明。スマールや市民の求めを考慮し、NATOの5%目標に反対を表明しました。

安心与える責任

 ロドリゲス氏は「左派政党は軍事的な緊張のエスカレートに反対し、人間の安全保障、より強固な福祉国家、労働者に安心を与える取り組みを進める責任がある」と、反軍拡への決意を語りました。

 トランプ氏は27日に米ワシントンでの記者会見で、軍事費5%目標を拒否したスペイン政府を非難し、スペイン製品に高関税をかけて「代償を支払わせる」と主張。しかしスペイン経済はEUの域内市場を軸としていることから、パイス紙は米国の関税攻撃の影響は限定的だとみています。


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