2025年6月23日(月)
改正災害対策基本法・救助法
被災者支援 障害当事者参加を
修正協議担った仁比参院議員に聞く
共産党案 立民・国民が賛同
災害対策基本法や災害救助法などの改正法が通常国会で成立しました。能登半島地震などの教訓を踏まえ、防災強化や支援体制の充実につなげるものです。ただ、新設の「登録被災者援護協力団体」で、障害者が役員となる団体は登録できないとの「欠格条項」があり、削除を求める声があがっていました。日本共産党は衆参の審議でこの問題を指摘し、参院では同条項を削除する修正案を提出。可決には至りませんでしたが、立憲民主党と国民民主党が賛成するなど共同が広がりました。修正のため他党との協議を担った日本共産党の仁比聡平参院議員に経過を振り返ってもらいました。
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法改正は避難所の環境改善と併せ、壊れた自宅や車中など避難所以外で生活する被災者支援を明確にし、国が費用負担する救助の種類に「福祉サービスの提供」を加えました。災害関連死に至る危険が高い障害者や高齢者に必要な支援を速やかに届けるためです。
被災現場では障害当事者への福祉的支援が重要だと指摘されてきました。能登では、13の障害者団体で構成する日本障害フォーラム(JDF)が石川県七尾市に「能登半島地震支援センター」を設置し、手弁当で障害当事者の家の片付けや通院、買い物の移動支援などさまざまなニーズに応えてきました。こうした実践を通じ、福祉的支援を法制度として位置づけることが改正の大きな趣旨といえます。
実情にふれて
![]() (写真)家財を運び出すボランティア=2024年8月24日、石川県輪島市 |
その福祉的支援の担い手として新設されたのが「登録被災者援護協力団体」で、ボランティア団体を登録し自治体との連携を密にすることを期待したものです。ところが、「心身に障害のある者」を排除する欠格条項が置かれました。私がこの条項を削除する必要性を強く意識したのは、2月にJDF能登半島地震支援センターを訪ね、“支援に終わりがない”被災地の実情にふれたからです。
仮設住宅は両隣と壁一枚、精神障害があり、どうしても大きな声が出てしまうのを気にして入居を諦め、雨漏りする半壊の自宅に暮らす母娘。巡回バスなど交通機関が元に戻らず、福祉事業所や病院に通うことが困難になって施設入所を勧められたが、自立して生活ができる限り自宅・地域で暮らしたいという願い。こうしたニーズは障害当事者が支援してこそ具体的につかまれることを痛感しました。
和倉温泉でマッサージ業を営んでいた視覚障害者の人たちが仕事を失った際、懇談の場で視覚障害のあるスタッフがリードしたことで心が和み、それまで語られなかった思いや悩みを話し始める方々も。障害当事者による支援=ピアサポートの重要性は、能登災害で改めて確認されました。障害当事者が被災した他の障害当事者を支援する際、社会的障壁を取り除く合理的配慮こそ必要です。
排除許さない
それなのに「心身の障害」を理由に欠格条項を設けることがいかに不当か。衆院の審議では、日本共産党の堀川あきこ議員が「障害者を含めたこれまでの団体の活動実績を踏みにじることがあってはならない」と強調しました。衆参の参考人質疑では、JDF能登半島地震支援センターの大野健志、塩田千恵子の両スタッフマネージャーがそれぞれ障害者権利条約や障害者基本法に反するとし、「障害のある人は被災地支援に加わることができない能力の低い者として差別や偏見を生むことにつながるのではないか」と削除を要求。参院では他の参考人もそろって「全く同じ意見です」と述べました。JDFの緊急要望書も提出されました。日本共産党国会議員団として、欠格条項の削除とピアサポートについて合理的配慮を明記する修正案の提出を決めました。
修正実現に向け、参院災害対策特別委員会の自民、公明、立民、維新、国民の各党と協議を重ねました。立民と国民の議員団会議に初めて呼ばれ、趣旨や必要性を説明し、活発に議論し、一緒に説明にあたった参院法制局は「とてもやりがいがある」と感想を語りました。自民、公明、維新も委員会限りにせず、それぞれ国会議員団として真摯(しんし)に検討してくれました。
残念ながら採決で否決となりましたが、立民と国民の議員が誇りをもって賛成の挙手をする姿が印象的でした。障害者団体「きょうされん」から「共産党の提案に他の野党が賛成したのはうれしかった」との声ももらいました。7月1日法施行に向けて当事者団体と力を合わせて排除を許さない取り組みを強めていきます。