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2025年6月20日(金)

主張

G7首脳会議

「法の支配」に背を向けた声明

 イスラエルのイランへの先制攻撃を不問に付すばかりか、擁護する―。カナダで開かれた主要7カ国首脳会議(G7)の共同声明には唖然(あぜん)としました。

■無法行為そのもの

 G7には、国連憲章、国際法に基づきイスラエルの蛮行を止めることが求められていました。ところがイスラエル支持の声明を出したのです。軍事衝突を激化させ、中東全域に戦火を広げかねない危険な表明です。G7が国際秩序を守る役割をまったく果たせない姿をさらけ出しました。

 イスラエルのイラン攻撃はみずから先制攻撃と認める国際法違反の無法行為そのものです。原子力施設をはじめ、貯油施設、政府施設、放送局など攻撃対象も拡大し、多くの市民が犠牲になっています。

 イスラエルはパレスチナのガザ地区での虐殺、ヨルダン川西岸における無法な入植・暴力・占領の拡大など度重なる国際社会の非難を無視したあげく今回の攻撃に出ました。イラン核問題の協議さなかの攻撃は交渉による解決の道を閉ざそうとするものです。

 イスラエルがイランの指導者の殺害計画も準備し、ネタニヤフ首相が、体制転換は「結果としてありえる」とするのは重大な主権侵害です。

 ところがG7声明は、イスラエルの先制攻撃をいっさい非難せず、イスラエルの自衛権を「確認」し、「支持を改めて強調」しました。一方で、「イランは地域の不安定及び恐怖の主要な要因である」と断罪しています。

 「法の支配」「ルールに基づく国際秩序」「国連憲章の尊重」という言葉が消えたのも特徴です。ロシアのウクライナ侵略では「法の支配」を強調する一方、イスラエルの無法には口をつぐむ二重基準も問われます。これでは中東だけでなく、国際世論の包囲で止めるべきウクライナ侵略も止められません。

 当初の声明案には、国際法にのっとり両国に自制を求める内容があったのをトランプ米大統領が拒否したため、修正したと報じられています。トランプ氏に引きずられ、そのレベルまで下りていったということです。

 石破茂首相はイラン攻撃直後、「到底許容できるものではない。極めて遺憾で強く非難する」とのべていました。ところがG7では共同声明を支持し、終了後、「イスラエルとイランの緊張緩和を求める共同声明を発表したことは大きな成果だ」と誇るとはどういうことなのか。政治家としての矜持(きょうじ)が問われる対米追従ぶりを見せつけました。

■米国の攻撃許すな

 いま、トランプ大統領はイランに「無条件降伏せよ」と突きつけています。イスラエルに加担し米軍に地下原子力施設の攻撃を命じるのではないかとの危惧が広がっています。米空母や米軍機が中東周辺に展開しつつあります。双方に大惨禍をもたらし、世界の平和を脅(おびや)かす攻撃を絶対に許してはなりません。

 日本政府は、イスラエルに即時攻撃をやめること、イランに自制することを求めるとともに、米国にイランを軍事攻撃することが絶対にないように毅然(きぜん)と主張すべきです。


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