2025年6月14日(土)
きょうの潮流
もしヒトラーが核を手に入れていたら、われわれの文明や文化は終わりを告げていただろう。そう例をあげて危機感をあおりました▼1996年に初めてイスラエルの首相となったネタニヤフ氏。その頃に出した著書の中で、イランによる核開発を最大の脅威とし、もはや一刻の猶予もならない、世界は地獄の淵に立っていると書き立てました(『テロリズムとはこう戦え』)▼長じてからのほとんどを「テロ」との戦いに費やしてきたというネタニヤフ首相は「指導者は、どんなに激しい非難にあってもやるべきことはやる勇気をもたなければならない」と。「勇気ある行動こそ最良の答えだ」との執心は今も▼「イスラエルの生存を脅かす差し迫った危機だ」。イランの核関連施設を含む複数の拠点を空爆したことを、ネタニヤフ首相は自衛のための措置と正当化しました。女性や子どもたちも犠牲にしながら▼イランも報復を宣言し、中東情勢のさらなる悪化が懸念されます。「テロ基地」と呼んできたガザの集団殺害をはじめ、周辺諸国への軍事攻撃をやめないイスラエル。周りに憎悪が充満し、国際社会からも孤立する中、やりたい放題の無法な蛮行をいつまで続けるのか▼かつてネタニヤフ首相は、最も基本的な防御策とは民主主義の価値を説き続け、暴力によらない方法で対立を解消しようと努力することだと語っていました。狂気にとらわれたように他国や他民族を殺りくする今の姿は、みずからの国や国民をも危うくするだけです。