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2025年6月13日(金)

「駆け込み寺」幹部逮捕

都が補助金 責任重い

被害女性支援 認識が不十分

 東京都から若年被害女性等支援事業の補助を認定され、新宿区歌舞伎町を拠点に活動する公益社団法人「日本駆け込み寺」の男性事務局長が5月、違法薬物の所持の疑いで現行犯逮捕されました。同団体を補助してきた行政の姿勢が問われています。(日隈広志)


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(写真)東京都庁第1本庁舎

 警視庁新宿署は同23日に男性宅の家宅捜索で、大麻とコカインを押収。男性は警察に「大麻は10年前から使っていた」「コカインは歌舞伎町の売人から2万円で買った」と話しているといいます。男性と一緒に女性も逮捕されました。相談者とみられます。女性は、男性から「オーバードーズ(薬の過剰摂取)するくらいならコカインを使った方が良い」と勧められたと供述しました。

 男性は、関連団体の「青少年を守る父母の連絡協議会(青母連)」の代表理事を兼任。ホストからの被害者の親や区立大久保公園付近で性売買に関与させられている少女らの相談に乗っていたといいます。

区長もアピール

 東京都は「駆け込み寺」に2023、24年度に計6000万円超の補助金を交付決定しました。新宿区は22~24年度に計300万円を補助し、ポスターのデザイン作成など7事業で「駆け込み寺」「青母連」と連携。吉住健一同区長はSNSなどで「駆け込み寺」への支援をアピールしていました。

 事件を受けて、都の担当者は「まずは事実確認をしている」とし、新宿区担当者は支援や連携などのかかわりを「中止した」と述べました。

業者と同じ手口

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(写真)戒能民江さん

 戒能民江お茶の水女子大学名誉教授は、女性の供述が事実ならば、「“支援する”かのようにして違法薬物を勧めるのは、買春者や性売買業者と同じ手口だと言われても仕方がありません。都と新宿区の責任は重い」と指摘します。女性支援法(24年4月施行)の「国の基本方針」の早急な徹底を求めました。

 基本方針は、「民間団体の中には女性への支援として適切ではない団体もある」として、国と自治体が注意深く情報収集に努めることを定めています。

 戒能さんは「事件は、少女たちが直面する問題への行政の認識が不十分な中で起きたと言えます。1団体の不祥事ではなく、社会的問題として見るべきです」と話します。

 歌舞伎町では、家庭で性的虐待などを受けてきた少女を、ホストや性売買業者が路上に立たせています。

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(写真)仁藤夢乃さん

 一般社団法人「Colabo(コラボ)」代表の仁藤夢乃さんは「『駆け込み寺』が関わっていた少女たちが心配です」と話します。支援側・行政側に「少女を『守ってやる』という誤った男性目線がなかったでしょうか」とも指摘。性搾取の理解を抜きに、少女を尊重し対等な関係性を築く支援体制はつくれないと強調します。

 「虐待や性搾取の被害、傷を受けた少女たちは、その傷に向き合っていくことになります。自分が『悪い』『汚れている』と思わされている中でその傷の原因が性搾取や社会の問題だと気づいていくのは、回復の大きな力になります。少女と一緒に社会を見つめ、支える姿勢は不可欠です」

 都の若年被害女性等支援事業 2018年から実施する10~20代の性搾取などの被害者女性への支援事業。コラボの活動がモデル。23年には、受託事業者だったコラボが被ったデマや妨害を受け、コラボに一部活動の中止を要求。コラボは同事業からの撤退を余儀なくされました。同時期に補助事業者に認定したのが「駆け込み寺」でした。


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