2025年6月12日(木)
主張
学術会議解体法強行
歴史に禍根残す自公維の暴挙
日本学術会議を解体し政府に従順な機関に変質させる法律が、11日の参院本会議で可決・成立しました。学術会議による法案への深刻な懸念や多くの科学者、市民の反対を無視して強行した石破茂政権と自民、公明、維新に満身の怒りを込めて抗議します。
国会審議を通じて法案のもつ狙いと重大な問題点はいっそう浮き彫りになりました。
■思想選別を合理化
政府は、審議の前提といえる2020年の会員任命拒否の理由を明らかにせず、首相による任命は形式的とする法解釈を変更した行政文書の黒塗り部分の開示も拒否しました。坂井学内閣府特命担当相が「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は今度の法案では解任できる」と答弁し、思想選別を合理化したことは、法案のもつ危険性を露呈しました。
政権の意によって恣意(しい)的に学者を排除することは、任命拒否と同様に「学問の自由」「思想信条の自由」を踏みにじる政治介入であり、戦前の滝川事件、天皇機関説事件など、学問への弾圧を現代によみがえらせるものです。絶対に許されません。
戦前の科学者の戦争協力への反省から、「科学者の総意の下に」「平和的復興、人類社会の福祉に貢献」するとした現行法の前文を、新法は削除しました。政府は「法案の目的に置き換えた」と言い逃れました。しかし、学術会議が軍事研究を拒否した3度の声明を、維新が「学問の自由を奪うもの」とねじ曲げ、軍事研究に貢献する組織にするよう求めたのを政府は否定しませんでした。石破政権の大軍拡に学術界を協力させることに新法の狙いがあることを端的に示すものです。
新法で、首相任命の監事や評価委員会、外部者による選定助言委員会を設置することで学術会議の人事、運営、財政に政府が幾重にも介入する危険性のあることも具体的に明らかになりました。会員候補者の選定に関し選定助言委員会は「(学術会議の)諮問に応じて意見を述べる」とされていますが、まったく諮問がない場合、「監事による監査の対象にしうる」と政府は答弁しました。学術会議が自律的に行うべき会員選定がゆがめられることは明らかです。
■広がった反対運動
国会審議が始まって以降、法案反対の声が急速に広がりました。200を超える学協会や日弁連、多くの市民団体が反対声明を出し、オンライン署名は約7万筆となりました。学者や市民が共同し、院内集会や「人間の鎖」、学者の座り込みが波状的に取り組まれました。平和と自由への願い、良識の発露として歴史に刻まれるものです。
学術会議の独立性は、憲法が保障する「学問の自由」に基づいています。新法によって政府が学術会議に対していかなる介入を行おうとも、「学問の自由」の侵害であり、科学者コミュニティーとの深刻な矛盾は避けられません。
学術会議の独立性を守り、政府の介入と軍事研究の暴走を許さない世論と運動をいっそうひろげましょう。歴史に禍根を残す暴挙を行った自民、公明、維新に断固とした審判をくだしましょう。