2025年6月8日(日)
きょうの潮流
千葉県野田市で小6の男児が自殺した事件(2019年)で再調査委員会はいじめが原因と公表しました。ノートには「SOS 助けて欲しい むしされる」「物をなげられる うそ情報をながされる 自殺したい」と書かれていました▼『こども六法』の著者・山崎聡一郎さんは、小学生の頃、暴力を伴ういじめを受けていました。大人に相談しても、自分にも問題があるようにいわれ、助けてもらえなかった、と。刑法の条文を読んで、暴行罪だけでなく、侮辱罪や名誉毀損(きそん)など、いじめを裁く法律があることを知り、被害者は悪くないという心の支えになったといいます▼「いじめられる方にも問題がある」とは、根強くある固定観念です。性加害や差別でも、被害者の服装や行動などの“落ち度”を問われることがしばしば▼その背景には「公正バイアス」と呼ばれる心理的な動きがあるといわれます。誰かが理不尽な被害にあった時、“自分には起こらない”という安心感を得るために、被害者側に原因を求めようとする心理です▼『いじめ解決の政治学』(藤森毅著)は、いじめの過程に「孤立化」「無力化」「透明化」の3段階がある、と。加害者は、被害者の“落ち度”を話して回るPR作戦を展開し、大人も巻き込んで「孤立化」させるのです▼どう問題に向き合うか。藤森さんはいいます。「『いじめは人権侵害であり暴力だ』という認識は、いじめられていい人間はこの世に一人もいないということの、ぶれない確認である」