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2025年6月6日(金)

きょうの潮流

 「タジタジでした。平和って何ですか、と聞かれても短く話すのは難しい」。東京・北青山の野外ステージで戦争を語り継ぐ朗読会でのこと。俳優・声優の矢田稔さん(94)は、小学生の質問に答えるように1本の記事を読みました。『あの戦争を伝えたい』(東京新聞社会部編)収録の「肉親に手をかけ…」。沖縄戦の「集団自決」の記録です▼2006年から、この活動を続けています。「朗読は一人でもできる。お金もかかりません。わずかでも平和につながることができれば、と思いましてね」▼戦前は童謡歌手。1939年、8歳の時に担任の勧めで「月の沙漠」の作曲家・佐々木すぐるの門下生になりました。当初、反対していた父は、「お国のためになる」という担任の一言で賛成に▼入門から1週間後にステージに立ちます。歌ったのは佐々木氏作曲の「兵隊さんよありがとう」。「この歌を知らないと、笑われるほどヒットしていました」▼後に子役として戦意高揚の映画や舞台に出演しました。授業を休んで傷病兵士の慰問にも行きました。学校に行っていない不安は、「自分もお国の役に立っている」と思うことで解消しました。戦後、「戦犯」と言われたことがあります。「歌が好きなだけでしたが、そう言われても仕方がないのかな」と▼朗読会の活動は「贖罪(しょくざい)というほど立派なものではない。自分のコンプレックスを和らげるためです」と。その奥には二度と文化・芸能を戦争の道具にしてはならないとの思いがあります。


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