2025年5月29日(木)
主張
コメ高騰の対策
増産へのカジ切り明確にせよ
5キロ4千円を超えるコメの価格高騰をおさえるのは国民の切実な願いです。
小泉進次郎農水相は「5キロ2千円で6月初旬店頭に並べたい」とのべました。そのため備蓄米を随意契約で、国が売り渡し価格を決めるという今までにない方法で、これまでの半額で直接売り渡す対策を打ち出しました。米価を市場任せにすることに固執してきた自民党農政の破綻です。
■自民党農政の破綻
コメの高騰は深刻かつ異常で、自民党農政の延長線の対応では解決できない事態です。緊急の対策とともに、コメの増産、将来にわたる安定供給と一体で取り組むことが求められます。
今回売り渡す備蓄米は、コメの年間需要700万トンにたいし、30万トンでしかありません。すでに高価格で取引された在庫があり、2025年産米も高価格で契約されているもとでは、その効果も限定的でしょう。他方、極端に安い売り渡し価格は農家に米価下落の不安も広げています。
随意契約(第1次分)が大手スーパーなどに限られ、中小スーパーや米穀店には行き渡らないため、小泉農水相自身認めるように公平性の問題があり、消費者に混乱なく行き渡るかも不透明です。中小小売りにも届くように対策をとるべきです。学校給食、医療・福祉施設、フードバンクなど困窮者に届ける手当ても考えなければなりません。
コメの高騰は、需要量より23年産米が44万トンも不足したことに起因しています。コメ消費の減少を大前提に、需要に見合うギリギリの生産計画をたて農家に事実上の「減反」を押しつけてきた自民党農政がもたらしたものです。
政府は、「米価は市場が決める」として価格保障をしませんでした。しかもコメの流通の自由化をすすめ、大手の量販店が価格決定権を握り、価格は低く抑えられました。
農家は、肥料の値上がりなど経費もかさみ、「時給10円」といわれるほどで、コメを作れば作るほど赤字になる状況に追い込まれました。コメ農家は00年の174万戸から53万戸に激減し、生産量もおよそ3割も減りました。後継者が育たず、コメを生産する力の減退が深刻です。
いま必要なことは、当面の緊急対策と一体に、コメ増産にカジを切ること、それを政府が明確にすることです。国が責任を持ってコメの供給を安定化させる姿勢を示すことによってはじめて安定した流通が可能になります。
生産量を増やし、豊作のときは備蓄米を買い増すなど安心してコメ作りができるようにすることです。
■予算の大幅増こそ
農家が増産に意欲を持つには再生産可能な価格や所得の補償が不可欠です。それは社会的要請であり、欧州などでは当たり前のこととしておこなわれていることです。
農家が再生産可能な販売価格と消費者が求める購買価格の間に生まれるギャップを埋めなければなりませんが、それは政治の責任です。
農水産予算は国民の食料を守り命を支えるものですが、現在、軍事費の4分の1しかありません。農水産予算の大幅な増額が不可欠です。