2025年5月26日(月)
主張
2万人の「孤立死」
社会が根本から問われている
2万1856人。にわかには信じがたい数字です。死後8日以上も経過してから発見される「孤立死」の人数が初めて発表されました。多くの死者が放置されたままになっている―人間の尊厳が損なわれる事態です。
こんな社会でいいのか、問いかけられています。
警察が2024年に取り扱った1人暮らしで自宅で死亡した人は7万6020人。そのうち死後8日以上経過して発見された人を、生前に社会的に孤立していたと強く推認されるとして、内閣府の作業部会が「孤立死」としました。
65歳以上の高齢者が1万5630人と7割を占めますが、現役世代(15歳~64歳)が3割もいます。高齢者だけの問題ではありません。
どのように人生の最期を迎えたか―「孤立死」にはそれぞれの原因や背景があり一概に語ることはできませんが、生前に社会的に孤立していたという実態こそ問題で、解決しなければならない課題です。
■背景に困窮・格差
内閣府の「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」(24年)では、孤独感が「しばしばある・常にある」人は4・3%です。20歳代(7・4%)、30歳代(6%)が高くなっています。
階層別でみると、「仕事をしていない(仕事を探している)」人たちでは10・5%と倍以上となり、「暮らし向きが大変苦しい」人たちでは12%と3倍になっています。
年収別でみると100万円未満では7・7%と高く、収入が多くなるほど「孤独感」が少なくなっています。
雇用の不安定化や経済的な困窮、格差が社会的孤立の背景にあることが浮き彫りになっています。
政府が24年、策定した「孤独・孤立対策の重点計画」も、グローバリゼーションが進む中で「雇用形態の多様化や所得格差の拡大等を背景として…人と人との『つながり』や人間関係を築くことが容易ではない社会になりつつある中で…孤独・孤立を感じざるを得ない状況を生む社会へと変化してきたと考えられる」と指摘しています。
■免れぬ政治の責任
単身世帯の割合は00年27・6%だったのが20年に38%となり、40年には43・5%へと急増が見込まれています(国立社会保障・人口問題研究所推計)。そうした社会にふさわしくどのような社会的なつながりづくりが可能か、対策が急がれます。
目の前にある「孤立」への対応として、国はもちろん自治体や医療機関、NPO(非営利組織)などが相談支援体制づくりなどに取り組むことが緊急に求められます。しかし解決のため根本的に問われるのは、「孤立」をなくす社会のあり方、政治の責任です。
安定した仕事、収入、住宅、時間があり、食事がとれる。1人でも安心して暮らせる医療や介護の体制がある―。そういう当たり前の生活が保障されなければなりません。それとは逆に非正規雇用を広げ、「自己責任」論を押しつけてきたのが自公政治です。
都議選・参院選で国民を孤立に追いやってきた政治の責任が厳しく問われなければなりません。