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2025年5月19日(月)

主張

2019年日米貿易協定

違反許さず関税の撤回求めよ

 トランプ米政権は、世界各国に一方的な関税措置や要求を突きつけ、取引を迫っています。日本には自動車への25%の追加関税を4月3日に発動。今後の交渉でも、それについては取引の範囲外にするとも伝えられています。

 しかし、これは第1次トランプ政権時の2019年に結ばれた日米貿易協定で自動車・自動車部品などに追加関税を課さないとした合意に反します。

 日本共産党の田村智子委員長は、石破茂首相に対し「日米協定違反という認識を明確に伝えて撤回を求めたのか」と追及しました(4月14日の予算委員会)。石破首相は「貿易協定との整合性に深刻な懸念を有していることは申し上げた」と答弁しましたが、米国による一方的な関税措置の全面撤回を毅然(きぜん)と求めるべきです。

■日本の一方的譲歩

 19年の日米貿易協定は、トランプ大統領の要求に、日本側が一方的に譲歩した不公平な合意でした。

 日米交渉は、トランプ政権が12カ国の環太平洋連携協定(TPP)から離脱した後、米国内で日本への農畜産物などの輸出で不利になったとの不満が噴出したため、トランプ大統領が当時の安倍晋三首相に2国間交渉を迫って始めたものです。翌年に控えていた大統領選挙を前に米国内の農家などに有利な合意を取り付けるのが狙いで、交渉開始からわずか5カ月足らずで合意しました。

 日本政府は、日米双方に利益がある「ウィンウィン」の合意だとしていましたが、正式に署名された協定を見れば、日本が一方的に譲歩し、アメリカだけが「ウィン」の中身であるのは明らかです。

 トランプ大統領が首脳会談に米国の農業団体の代表を同席させ、「米国の農業にとって巨大な勝利」と述べたことに象徴されます。

 実際、協定では、牛肉の輸入関税を38・5%から最終的に9%まで削減するなど、日本側が農畜産物について大幅に市場を開放することを約束しました。日本の農畜産業に打撃を与え、食料自給率を低下させました。

■追加課さぬはずが

 一方、日本がアメリカに輸出する自動車や部品の関税撤廃については、協定付属文書に「さらなる交渉次第」と記載されたものの、具体的な撤廃期間などは規定せず関税撤廃は見送られました。

 追加関税については、「協定の誠実な履行がなされている間、協定及び共同声明の精神に反する行動をとらない」と日米首脳の共同声明で確認し、日本政府の日米貿易協定の概要には「追加関税を課さない」と明記されています。

 日本は農畜産物で大幅に譲歩したうえ、今回はその協定さえ一方的に踏みにじられています。トランプ政権のやり方はあまりに横暴です。

 自民党からはトランプ関税と引き換えに米国産のコメ、大豆、トウモロコシを輸入拡大する議論が出ています。

 日本の農畜産業をさらに衰退させ、食料安全保障をおびやかします。アメリカの顔色をうかがい「貢ぎ物」を差し出すような外交姿勢は断じて許されません。


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