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2025年5月17日(土)

参院本会議 能動的サイバー防御法案

井上議員の反対討論(要旨)

 日本共産党の井上哲士議員が16日の参院本会議で行った能動的サイバー防御法案に対する反対討論(要旨)は次の通りです。


 同法はサイバー攻撃の実態把握を理由に、国民のあらゆる通信情報を政府が無断で取得することを可能とします。憲法が保障する通信の秘密を侵害し、本人の同意がなければ目的外利用や第三者提供が認められない個人情報を、政府の都合で収集・利用するもので断じて認められません。

 政府は、通信の秘密に対する制約が必要やむを得ない限度にとどまると説明していますが、審議で破綻が明らかとなりました。

 通信情報の取得と利用について、電話傍受と通信の秘密に関する最高裁決定は「犯罪の捜査上やむを得ないと認められる時」に電話傍受が許容されるとしています。同意によらない通信情報の取得には、通信情報を取得・分析しなければ実態把握が困難といった「やむを得ない」事情が要件とされています。ところが同法の当事者協定による通信情報の提供にはこのような要件がありません。提供される情報には協定当事者のウェブサイト等にアクセスしている国民の通信情報も含まれています。協定を結ぶのは政府と事業者で、国民は同意を求められることなく自らの通信情報が一方的に政府に取得されます。

 市民の個人情報を無断で収集し、第三者へ提供した岐阜県・大垣警察による市民監視事件のような違法行為を通常業務として日常的に行っている警察庁、都道府県警察に通信情報が令状なしに提供されます。憲法第35条の令状主義にしばられない新たな制度の創設であり、極めて問題です。政府は通信情報を犯罪捜査に利用することも可能と認めており、国民監視に利用される懸念も払拭されていません。また、当事者協定に基づく通信情報を自動選別した選別後通信情報は、サイバー攻撃の被害防止という目的以外にも利用可能とする規定まであります。

 警察と自衛隊が憲法と国際法が禁じる先制攻撃に踏み込むことを可能としていることも重大です。海外サーバーにアクセス・無害化措置を行えば、相手国から主権侵害と受け止められる可能性は否定できません。

 平時・有事にかかわらず、自衛隊が在日米軍へのサイバー攻撃に対しアクセス・無害化措置を実施するとしています。直接攻撃を受けていないにもかかわらず、米国と交戦状態にある相手国に対し同措置を実施すれば、相手国から日本の先制攻撃と受け止められる可能性は極めて高まります。日本を戦争に巻き込むことは到底容認できません。


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