2025年5月15日(木)
主張
印パの軍事衝突
停戦を確固とし平和的解決を
核兵器保有国同士がミサイルを撃ち合う―世界は核兵器使用の危険と隣り合わせにいる恐怖をあらためて思い知らされました。インド軍が7日、テロへの反撃だとしてパキスタンを攻撃し、パキスタン軍は8日インドを攻撃、軍事衝突のエスカレートが心配されるなか、両国は10日、停戦で合意したと発表しました。停戦を確固としたものにし、紛争の平和的解決をはかることを強く求めます。
■核兵器国間の衝突
この軍事衝突がとりわけ心配されるのは、両国が核兵器保有国だからです。インド172発、パキスタン170発の核兵器を保有しているとされます。パキスタンのシャリフ首相が、核兵器の運用を担う最高意思決定機関「国家指令本部」の会合を開くと表明したことが伝えられ、緊迫しました。核兵器が使用されれば、両国のみならず地域と世界に甚大な惨害をもたらします。核兵器の使用も、その威嚇も断じて許されません。
今回の軍事攻撃の発端になったのは、4月にインドが実効支配するカシミール地方で、観光客ら26人が殺害されたテロ事件です。これ以後、両国はビザ発給停止や、両国を流れるインダス川の水資源利用協定の履行停止などの措置を取り合ってきました。こうしたなかインドは「これ以上の攻撃を阻止する」として軍事攻撃に踏み切りました。
これに対しパキスタンは「露骨な侵略」と非難し、インド軍基地などを攻撃し、双方に死傷者も多数、出ました。 両国には、カシミール地方の帰属をめぐって軍事衝突を繰り返してきた複雑な歴史があります。英国の植民地でしたが、第2次大戦後1947年8月、ヒンズー教徒中心のインドとイスラム教徒中心のパキスタンに分かれて独立しました。
カシミール地方はイスラム教徒が多数の地域でしたが、藩王(領主)がヒンズー教徒であり、帰属が決定しないまま同年10月、領有を求めて両国軍が軍事衝突をしました(1次印パ戦争)。さらに2次(65年)、3次(71年)と印パ戦争が勃発し、その後も武装集団のテロや武力衝突が繰り返されてきました。
この間、インド、パキスタンは核実験をおこない、核兵器保有国となりました。
両国の軍事衝突に対し、グテレス国連事務総長が「非常に懸念している」として最大限の自制を求めたのをはじめ、世界中から自制と停戦を求める声が広がりました。
■国連憲章に基づき
停戦合意が成立したものの、インドのモディ首相が「テロ拠点への報復を一時的に止めただけ」と発言するなど、交戦再開の危険が続いています。両国関係の正常化に向けて冷静な外交努力が求められます。
今日、ロシアのウクライナ侵略、米国の支援を受けたイスラエルによるガザ攻撃など国連憲章を踏みにじる蛮行がおこなわれています。武力不行使、平和解決などを定めた国連憲章を、大国をはじめ、すべての国が厳守することが強く求められています。
両国が国連憲章の根本精神に基づき紛争を平和的に解決するように訴えるものです。