2025年5月14日(水)
主張
公益通報保護法改正
実効性ある運用で告発者守れ
組織の不正を内部告発した人を保護し、不利益扱いを禁じる公益通報者保護法の改正案が全会一致で衆院を通過し、参院での審議に移ります。
公益通報をめぐっては、兵庫県の斎藤元彦知事が自らを告発した文書を公益通報と扱わず、法に反して通報者捜しを行い、告発者を懲戒処分にしました。告発者は自死しましたが、斎藤知事は非を認めていません。鹿児島県警は、県警職員の犯罪行為を報道機関に通報した幹部を“情報漏洩(ろうえい)”として逮捕しました。
通報者捜しや不利益扱いはいまだ後を絶ちません。
公益通報者保護法は2004年に制定されました。02年に、東京電力の原発トラブル隠しや雪印食品の牛肉産地偽装などが関係者の告発をきっかけに発覚。さらに大手運送会社の闇カルテルを内部告発したトナミ運輸の社員が約30年、一人部屋に隔離されて雑役を強いられ、同年、損害賠償を求めて会社を提訴したことで法制定を求める声が高まったことによります。
■新たに刑事罰科す
しかし、創設時の法律は公益通報として保護する対象を狭く限定し、▽メディアなどへの通報に厳しい要件を課す▽下請け業者は保護の対象でない▽不利益扱いだという立証責任を通報者に課す―など極めて不十分で、通報者への報復が絶えませんでした。
その後の改正で、外部通報の要件緩和、保護される通報や通報者の範囲拡大、内部調査に従事する者の守秘義務(罰則付き)が定められ、下請け業者や役員も保護の対象になりましたが、実効性に乏しくさらなる見直しが求められてきました。
現行法でも報復としての解雇は無効で、降格などの不利益扱いも禁止ですが、今回の改正案では実効性を高めるため新たに、懲戒をした事業者と担当者(公務員の場合は担当者)に刑事罰を科します。通報者捜しは現行法でも運用指針で禁じられていますが新たに条文を設けて禁じます。
改正案に沿えば兵庫県知事や鹿児島県警の行為は刑事罰に該当します。
■不当配転も対象に
改正案では、通報後1年以内の解雇や懲戒は通報を理由にしたものと推定し、処分された人が訴訟を起こした場合、処分が通報を理由としたものではないという立証責任を事業者に負わせます。公益通報者の範囲にフリーランスも加えます。これらは日本共産党が法創設時や法改正時に求めてきたものです。
今回の改正案は一歩前進ですが不十分な点も残ります。不利益扱いのうち不当配転や嫌がらせへの罰則は見送られました。現実には報復として配置転換が行われる例が多く、日本共産党の本村伸子衆院議員は国会で「配置転換や嫌がらせで退職に追い込めば事実上、解雇と等しい結果になる」と指摘し、不当配転も刑事罰の対象とし、不当でないことの立証責任を事業者に負わせるよう求めました。
不正行為で被害を受けるのは国民です。通報者を守り、内部告発をしやすくするには不断に実効性を高める必要があります。なにより事業者や行政には法の趣旨にのっとった運用が強く求められます。