2025年5月13日(火)
主張
学術会議解体法案
学問圧殺する“御用化”許すな
日本学術会議解体法案がまともな審議もなく衆院本会議で採決されようとしています。「科学者の総意の下に」「独立して職務を行う」という学術会議を解体し、政府・権力の意に沿う組織、いわば“御用機関”に変質させるもので、「日本の学術の終わりの始まり」(歴代会長6氏の声明)となります。断じて許すわけにはいきません。
■学者の排除制度化
2020年の菅義偉首相(当時)による会員候補6人の任命拒否は、権力による違法な人事介入であり、「学術会議の独立性を侵害する」と激しい批判を呼びました。政府がなすべきは任命拒否の撤回であり、学術会議を変質させることではありません。
法案によって設けられる、外部者からなる選定助言委員会は、学術会議の会員選定方針に意見を言うほか、候補者選定にも意見を言えます。政権にとって都合の悪い学者を排除する制度を法律に組み込むものです。任命拒否をしなくても人事介入ができることになります。
坂井学・内閣府特命担当相の「党派的な主張を繰り返す会員は今度の法案では解任できる」という国会答弁(9日)がそれを明白に示しています。学者の政治的主張や活動は学者としての学識にもとづくものです。政府に都合の悪い言動を「党派的」と勝手に認定して排除することは、憲法が定める「学問の自由」「言論・表現の自由」のあからさまな侵害になります。
法案は、現行法の前文を削除し、「科学者の総意の下に」「わが国の平和的復興に貢献する」という学術会議設立の原点を消し去りました。
これは戦前に科学者が戦争協力したことへの反省からうたわれたもので、3度にわたる軍事研究拒否の声明もこの原点に立つものです。これを覆し、戦争する国づくりに学術界を動員することに法案の最大の狙いがあります。
■独立奪い軍事動員
法案は、憲法23条が保障する「学問の自由」にもとづいた「独立して職務を行う」という現行法の規定を削除しています。政府は、その理由として「国から独立した法人になるから必要ない」との詭弁(きべん)を弄(ろう)しています。しかし、この規定を削除し、政府が学術会議の人事、活動、財政にわたって介入する仕組みを幾重にも設けたことは、「独立性」を侵害するものです。
学術会議が4月15日の総会で採択した声明は、「政府からの独立、会員選考における自主性・独立性が充足されておらず、むしろ独立性の阻害が意図されている」と深刻な懸念を表明しています。
国会の参考人質疑で梶田隆章前会長が述べたように、学術会議の同意のないまま組織や会員選考の変更を法定化すること自体、独立性・自律性を侵害しています。
学術会議の独立性を奪い、軍事研究をはじめ政府や財界の意に沿う方向に学術界を動員しようとすれば、学問の自由を奪い学術の衰退をもたらします。結局、日本の研究力をつぶし、日本の針路をも誤らせます。反対の声を広げ抜き、日本の学術を圧殺する法案を必ず廃案にしなければなりません。