2025年4月26日(土)
被害告発できる社会へ
記者への性暴力 原告コメント
![]() (写真)判決後の集会に臨む弁護団=24日、東京・千代田区 |
取材中の報道記者への性暴力事件国家賠償請求訴訟で東京地裁は24日、国に440万円の支払いを命じる画期的な判決を出しました。判決後の報告集会で、原告の元記者の女性が「裁判に力を得て前に進みたい」とコメントを出しました。
元記者は、「責任追及の主張が認められほっとしました」とし、裁判を支援してきた人たちへの感謝をつづりました。
「被害から5年たっても自分の意思とは無関係に出来事を想起させられ涙が止まらず眠れなくなる日もあります」と吐露。「『これくらいは我慢しなきゃ』『性的な発言は聞き流そう』とうまく立ち振る舞うことが求められてきました」と報道現場のありようを告発し、このため警察に被害届を出すときに二次被害を恐れたと言います。
「取材中にお酒を飲んだ自分が悪いのか」と何度も自分を責めましたが、悩んだ末に相談できた人から「権力を利用した悪質な犯罪だ」と言われすぐ、被害届出すことができ、「あのとき、防犯カメラの映像や着衣に残された証拠などが消える前に、警察に行けて良かった」と振り返りました。
「被害者が勇気をもって声をあげようとしても、それをためらわせる社会は変えたいと思いました。社会から性暴力をなくすため、多くの人に『人ごと』ではなく『自分ごと』として理解してもらいたい」とし「私もこの裁判に力を得て、前に進みたいと思います」と語りました。
集会では、弁護団の長谷川悠美弁護士が、裁判所の判断は当然のこととしつつ「当然のことがなかなか認められてこなかったというところがあるので、非常に意義のある判決」と評価しました。
性暴力と判断 大きな成果
民放労連声明
日本民間放送労働組合連合会(民放労連・岸田花子委員長)は25日、「国会議員公設秘書による報道記者への性暴力 国賠訴訟判決を受けて」との声明を発表しました。
声明の中で「原告側は、取材の機会につけこんで行われるハラスメントや性暴力は、民主主義社会に不可欠な取材・報道の自由を侵害するもので、記者としてのキャリアと人間としての尊厳を根底から奪う『差別と暴力』であることを強く訴えました」と強調。「この裁判で司法が、国会議員秘書が記者と会食することを業務と認め、そのうえで起きた性暴力だったと判断したことは大きな成果です」と判決を評価しました。
そのうえで「メディアで働く女性は、職場でハラスメントを受けるなど身に危険を感じることが少なくないという訴えが、労働組合には多数寄せられていましたが、それをプライベートの問題だと片付けられてきたケースが少なくありませんでした」と指摘。「私たちは、今回の判決で原告がその尊厳を取り戻すこと、また報道の現場で働く人たちの安全がより守られるようになることを望みます」と結んでいます。