2025年4月25日(金)
きょうの潮流
町工場や住宅が立ち並ぶ一角にその施設はあります。線路脇のマンションは一部が残され、会場内には追悼の碑や献花台が設けられています▼乗客106人と運転士が亡くなり、526人が負傷したJR福知山線の脱線事故。JR西日本が現場につくった「祈りの杜(もり)」ですが、一見しただけでは、あの悲惨さは伝わってきません。事故から20年を前に訪れると、同社の社員たちが花を手向けていました▼真新しいスーツの新入社員は、施設内にある事故関連の展示を見つめて「安全第一を肝に銘じたい」と。そこには、人命を預かる企業としての責任を果たしていなかった反省や、一人ひとりが安全の実現に不断のとりくみを積み重ねるという誓いが掲げられていました▼秒刻みの過密ダイヤ、スピードアップ、懲罰や見せしめ的な社員教育―。事故当時、効率や利益優先で安全は後回しの企業体質が背景にあったと、JR西は批判されました。それは自動列車停止装置が旧式だったことにも表れていました▼「いくらJR西や事故調査委員会の報告が示されても、それを生かしていない」。そう憤る遺族は今も。実際、減少していたJR西の運転事故はここ数年増えており、JR全体でも増加傾向にあります▼被害者や遺族の悔しさ、悲しみは月日がたっても。今年は日航機墜落事故から40年にもあたります。安心・安全の大もとを根底から覆す公共交通機関の事故は警鐘を鳴らし続けています。命を運ぶものが、金もうけの手段となっていいのか。