2025年4月23日(水)
主張
収まらない米価高騰
安心して増産できる体制作れ
政府が備蓄米の放出に踏み切って以降も、米の値段が高騰したままです。事態を打開し、すべての国民が安心して米を食べられるようにすることは国の重大な責任です。
今回の異常事態の直接的な要因は昨年来のかつてない米需給の逼迫(ひっぱく)にあります。
2024年6月までの1年間の米需要量705万トンに対し、その間に流通する23年産の生産量は661万トンしかありませんでした。24年6月末の民間在庫量は史上最低に落ち込みました。
店頭から米が消える事態になり、24年産の新米の先食いを余儀なくされました。その後も品薄感から流通業者による集荷競争が続き、価格高騰が深刻化したのです。
■安定供給に責任を
昨年秋、備蓄米の放出を求める声が高まっても、政府は「新米が出回れば落ち着く」と言って、何もしない無責任な対応に終始しました。今年に入っても、あくまで「米は足りている」「流通に目詰まりが起きている」として、その場しのぎの対策にとどめてきました。それが事態を悪化させ長引かせています。
こうした政府の対応の根底にあるのは「米価は市場で決まる」という考え方です。
今年6月末の民間在庫量は昨年よりさらに少ない見通しで、今秋の端境期も逼迫が懸念されます。市場任せに固執する限り、米をめぐる危機的事態は打開できません。
いま必要なのは、備蓄米の活用を含めて、米の供給と価格の安定に政府が責任を持つと明確にすることです。
なかでも、備蓄米の販売方法を見直し、▽町の米屋さんやスーパーなどにも届くようにする▽学校給食、医療・福祉施設へ直接供給する▽子ども食堂やフードバンクへの無償交付を大幅に増やす―ことが緊急の課題です。
■食料安保揺るがす
昨年来の米不足の根本にあるのは歴代自民党政府による米減らし農政です。政府は需要が毎年減ることを前提に生産削減を農家に押しつけ、米価を市場に任せ暴落を放置してきました。2、3年前には米農家の時給が10円という悲惨な状態を生み出し、米農家の離農を加速させました。今年は米価が回復したとはいえ米生産の弱体化は深刻で、関係者は、このままでは国民の米需要が満たせなくなるとの強い懸念を示しています。
政府の米政策の根本的転換こそ米農家が安心して増産に励み、安定した価格で国民に供給できる最大の保障です。
具体的には、▽気候や経済変動などで多少の需給ギャップがでても米不足が生じないよう、ゆとりある需給計画で国内生産と備蓄を拡大する▽米が過剰になった場合には政府が買い支え、不足すれば売り渡して価格を安定させる▽価格の市場任せをやめ、価格保障や所得補償で米農家を支える―ことです。
米価高騰を受け財政制度等審議会分科会は輸入米活用を提言しています。食料自給率が異常に低い日本で自給可能な米まで外国に頼るのは食料安全保障を根底から脅かします。いま政治が緊急に取り組むべきは、農家が安心して増産に励める条件整備であり米生産基盤の抜本的強化です。