2025年4月23日(水)
きょうの潮流
「共に歩み、互いに思いやりながら、いのちを大切にしましょう。家庭を、自然を、子どもたちを、高齢者の方々を大切にしましょう。憎しみやいさかいを無くし、妬(ねた)むのをやめましょう」▼中南米から初めて選ばれたローマ教皇は就任のとき、人びとにそう呼びかけました。貧困や弱い立場に置かれている「小さき人びと」との連帯を象徴する聖フランシスコ。自身の名称としたことに信念を込めて▼カトリック教会の記念日として「貧しい人たちの日」を制定。貧困は疎外や暴力、自由と尊厳の欠如、無学や失業、強制移住などに苦しむ多くの顔となって私に訴えていると▼イタリア系移民の子としてアルゼンチンに生まれ、少年時代はサッカーに熱中。働きながら社会問題や政治について学び、スラムを訪ねたり共産党の機関紙を読んでいたといいます(乗〈よつのや〉浩子著『教皇フランシスコ』)▼バチカン改革に力を入れ、格差や差別、環境問題についても積極的に発言。利益至上主義や人を考慮しない搾取の論理の結果が私たちを危機にさらしていると、「野蛮な資本主義」にも警鐘を鳴らしていました▼平和や共存、核なき世界を訴え行動する聖職者でした。死去の直前、20日の復活祭のミサ。ガザやウクライナに思いを寄せながら呼びかけました。「平和な未来を切望する人びとに手を差し伸べてください。死の種を蒔(ま)かず未来を築くこと、これこそが平和の『武器』なのです」。宗教をこえ、その生き方が人びとに愛されたローマ教皇でした。