2025年4月20日(日)
主張
万博の「赤旗」排除
「知る権利」守り公正な対応を
13日に開幕した大阪・関西万博を運営する万博協会が「赤旗」などに対して「AD証」(関係者通行証)を発行せず記者会見や記者発表などから締め出しています。安全性などにかかわる「不都合な真実」を覆い隠す暴挙です。
■「言論封殺」と批判
協会は「取材できるのは案内したメディア」と言明し、報道機関でないネット発信者にも通行証を発行しています。排除されたのは問題点や課題を指摘してきたメディアです。意に沿わないものを排除するねらいは明らかです。
万博には多額の税金が投入され、協会には政府や自治体職員らが出向し、役職員は法律上「みなし公務員」です。すべての国民への等しい公平・公正な対応が求められます。
「赤旗」は官公庁や自治体で記者会見や記者発表など他のメディアと差別ない取材を認められ、愛知万博でも通行証が発行されました。万博協会だけが、「赤旗」を排除する道理も権利もありません。報道の自由、国民の「知る権利」を侵害する重大問題です。
「赤旗排除」を告発したXは290万表示回数を超える大反響を呼び、圧倒的多数が協会の姿勢を批判し、「赤旗や共産党を支持していないが今回の協会の対応はあまりにもひどい。言論封殺だ」との声など、「排除を許すな」は党派を超えた声です。
アメリカでは、メキシコ湾を「アメリカ湾」と表記しないことを理由に、AP通信が大統領執務室や大統領専用機でのトランプ大統領への取材から排除され、ワシントンの裁判所が、特定の報道機関の取材制限は言論や表現の自由を保障した憲法に反するとして取材禁止の仮差し止めを命じました。国際的にも「赤旗」排除は成り立ちません。
協会は、同協会の「メディア指針」に「赤旗」が該当しないかのように言い訳しますが、指針は官公庁や自治体の指針と同様の内容です。「赤旗」はその指針のもとで会見などの参加を認められており排除の理由になりません。情報公開・報道参加のオープン化の流れにも逆行しています。
■意見を改善に生かせ
これに関し維新の会が、万博への意見や批判を「ネガティブキャンペーンだ」などと攻撃しています。しかし、協会副会長で維新代表の吉村洋文大阪府知事は昨年4月、批判的な記者を「出禁」にするとの発言が批判を浴び、「批判的意見や課題を指摘するのは報道機関として当然」と謝罪・撤回に追い込まれました。「赤旗」などの排除はその誤りを繰り返すものです。
メタンガス問題でも、こうした意見や指摘があったからこそ、不十分ではあってもガス測定や換気が強化されるなど改善につながっています。批判や異論の排除は改善につながる機会を自ら閉ざす愚かな行為です。
国会で日本共産党の辰巳孝太郎衆院議員の質問に武藤容治経産相は、愛知万博や東京五輪では「赤旗」への通行証発行や会見参加を認めていたとして「協会に実務的検討を行わせる」と答弁しました(18日)。
報道機関の差別・選別をやめ、いのちと安全を最優先する運営に立ち返るべきです。