2025年4月20日(日)
きょうの潮流
「まさに、生き地獄だった」。原爆で灰となった広島の街に立ち尽くす科学者がいました。戦前、陸軍から原子爆弾の開発計画を託された仁科芳雄です▼惨状を目の当たりにした仁科は深い後悔とともに心に誓いました。戦争はしてはならぬ、科学者は政治の道具となってはいけないと。そして戦後発足した日本学術会議の先頭に立っていきます▼国を破滅させた戦争に協力した強い反省と、学問・研究を政治に利用させないという覚悟。それが学術会議の出発点でした。今国会で審議入りした学術会議法案はその原点を覆し、政府の意向に沿う組織へと変質させることを狙ったものです▼政府のたくらみは以前から。5年前、当時の菅首相による学術会議会員の任命拒否を本紙がスクープ。安倍政権が会員選考に介入していたことも明らかになっています。そのなかで学問の自由、学術会議の自主性や独立性を守るため、国会の内外で奮闘してきたのが共産党です▼法案の質疑で維新の会の議員が、それを事実無根のデマでねじ曲げました。統一協会の反共攻撃をネタ元に、あたかも共産党が学術会議に介入し干渉していたかのように。軍事に協力しろと学術会議に迫る同議員の姿は、この党の本性を如実に物語っています▼仁科は科学者としての再出発にあたって、こう記しました。「われわれはこの反省を通じて、今後世界平和のためにのみ積極的に努力すべく、決意を新たにすべきであると信ずる」。それはこの国の原点でもあったはずです。