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2025年4月16日(水)

主張

公営住宅の修繕費

退去時の高額な請求はやめよ

 市営住宅などの公営住宅を退去する際に、数十万円という高額の修繕費が請求される事案が各地で発生しています。日本共産党の大門実紀史議員は国会でこの問題を取り上げ、憲法の生存権に基づき住宅に困窮する低所得者に安い家賃で住宅を提供するという公営住宅の考え方を逸脱すると追及しました。(3月24日、参院国土交通委員会)

■47万円に上る例も

 公営住宅では入居時に家賃の2、3カ月分の敷金を払い、退去時に敷金から修繕費が差し引かれて返却されます。修繕費が敷金額を超えた場合は超過分が請求されます。

 この超過分として、愛知の県営住宅では25万円、東京の都営住宅では47万円など、各地で高額請求がされ、裁判になった例もあることがわかりました。「こんな高額は払えない」「民間の賃貸住宅ではこれほど請求されない」などの声も寄せられています。

 2017年の民法改正で、通常使用による損耗や経年変化の修繕費用は入居者負担にしない原則とされました。ところが、多くの公営住宅が、特約によってわざわざ民間賃貸住宅と異なる入居者負担を定めていることが高額請求の大きな原因です。

 国交省も19年の事務連絡で、民法の規定が任意規定であることや、公営住宅の毎月の家賃が民間に比べて安いことを理由に、この特約を容認しています。

 しかし、公営住宅は低所得者に住宅を保障するための制度で、家賃を抑えるのは当然です。都営住宅では平均額が約2万3千円など、民間と比べて低廉な家賃を設定しています。家賃が低いことを理由に、本来家主が負担すべき修繕費用を入居者負担にして、退去時に高額を請求できるのでは家賃を安くした意味がありません。社会保障、居住保障の要である公営住宅の役割が損なわれます。

■法の趣旨に反する

 大門氏が「民法で定める以上の請求をしてよいという根拠は公営住宅法にあるか」とただしましたが、国交省はまともに答えられませんでした。公営住宅法には根拠がないからです。「安く貸す分、後からたっぷり請求できる」という運用は民法改正の趣旨を台無しにし、公営住宅制度を逸脱する不当なものです。

 特約によって退去時に突然、高額の費用を請求することは、入居者の利益が説明もなく一方的に害されることから、消費者契約法上も問題があります。

 高額修繕費は、事前に告知しても問題があります。

 鹿児島市の市営住宅は募集案内書で、退去時に請求する修繕、清掃費用の目安を30万円から40万円とし、敷金のみでは大半の方は不足が生じると明記までしています。

 市民からは、あまりの高額に入居をためらうとの声が上がっています。高額の修繕費を理由に、低所得者が公営住宅への入居をあきらめる事態になれば、居住保障の妨げになりかねず、本末転倒です。

 安心して公営住宅に入居できるよう、民法の原則と異なる修繕費の特約をやめ、敷金でまかなえる範囲で請求するよう、国、自治体が運用を改めることが急務です。


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