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2025年4月12日(土)

主張

能動的サイバー法案

通信の秘密侵し戦争招く危険

 サイバー攻撃による被害を防止するとして、国民がスマホやパソコンなどで送受信する通信情報を常時収集・監視するとともに、警察や自衛隊が疑わしい海外のコンピューターに侵入し使用不能にする。そうしたことを可能にする能動的サイバー防御法案が衆院を通過(8日)し、参院で審議されようとしています。

 サイバー攻撃とは相手のコンピューターに不正侵入し、混乱させたり、機能停止にさせたりするなどの行為です。

 法案は、自治体を含む、電気・ガス・水道・鉄道・航空・金融といった基幹インフラ(社会基盤)の事業者などへのサイバー攻撃による被害を防止するのが目的とされています。しかし、衆院での日本共産党の論戦を通し、法案の重大な問題点や危険性が浮き彫りになっています。

■同意なく情報収集

 第一に憲法が保障する「通信の秘密」を侵害します。

 基幹インフラの事業者などは、政府との協定に基づき利用者との間で通信する情報を利用者の同意なく政府に提供することになります。

 政府は、取得した通信情報から送受信先を示すIPアドレスやメールアドレスなどの「機械的情報」を取り出しそれ以外は直ちに消去するとしています。しかし、IPアドレスは、スマホやパソコンなどインターネットに接続する個々の機器に割り当てられる識別番号です。手紙で言えば住所に当たり、それ自体が「通信の秘密」の対象です。

 しかも、政府が情報を恣意(しい)的に選別していないか、手紙の中身に当たる「機械的情報」以外の内容を実際に消去しているのか、を確かめる制度はありません。

 収集した情報は外国政府など第三者に提供することもできます。サイバー攻撃による被害防止の目的以外にも利用できる規定があり、警察や自衛隊が自らの業務で使用することも可能です。これは、警察が風力発電事業に反対する市民の個人情報を収集し民間企業に提供したことを違法と断じた「大垣事件」判決をないがしろにするものです。同事件では、警察が市民のメールの内容を把握していたことも明らかになっています。

 衆院での法案「修正」で「通信の秘密」の尊重規定が入りましたが、法案の仕組み自体は何も変わっていません。

■違憲の先制攻撃へ

 第二は自衛隊と警察が憲法と国際法に反した先制攻撃に踏む込む危険です。

 自衛隊と警察は収集した情報に基づき疑わしいと判断した海外のコンピューターに侵入し使えなくする「無害化措置」を行うことができます。相手国の同意もなく「疑い」だけで無害化措置を行えば重大な主権侵害、先制攻撃とみなされる危険があります。

 政府は、海外で戦争する米軍を安保法制に基づいて自衛隊が支援する際、相手国への無害化措置も可能としています。相手国からは日本が参戦したとみなされ、戦争の危険を呼び込むことになります。

 警察は犯罪の処罰を超えた無害化措置を裁判所の令状なしに実施でき、警察のあり方は大きく変質します。

 憲法と国際法を踏みにじる法案は廃案しかありません。


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