2025年4月8日(火)
論戦ハイライト
参院決算委 山下議員の追及
日本共産党の山下芳生議員は7日の参院決算委員会で、石破茂首相に「トランプ関税」の撤回を求めることや、雇用・中小企業を守る対策を迫ったほか、半導体企業によるPFAS(有機フッ素化合物)汚染の実態調査と規制強化を政府に求めるとともに、石破首相と統一協会(世界平和統一家庭連合)との関係を追及しました。
トランプ関税
撤回させ日本の産業守れ
![]() (写真)パネルを示して質問する山下芳生議員=7日、参院決算委 |
山下氏は、トランプ米大統領の関税措置は国際的ルールを無視し、各国の経済主権を踏みにじる不当なものだとして断固抗議し撤回を求めるよう要求。大企業の雇用縮小や取引先の単価切り下げがあれば悪影響を増幅させるとして、大企業に雇用、中小企業を守る社会的責任を果たさせるよう政府に求めました。
山下氏は、トランプ氏は相手国との協議もなく一方的に高い関税をかけており、到底許されないと指摘。世界経済全体に大きな影響を及ぼすとして抗議し、撤回させよと要求しました。石破首相は「撤回は求める」と応じました。
山下氏は、イタリアやオーストラリア、ブラジルなど世界の首脳が厳しく批判していると指摘。「国際協調で、とりわけ甚大な影響を受ける東南アジア、東アジアの国々と連携して撤回を求めるべきだ」と迫りました。
また、東南アジアへ輸出する自動車メーカーの部品の金型を製造している事業者の声を示し「ベトナムやタイなど東南アジアへの関税が最も高く、東南アジアの経済が打撃を受けたら日本車も売れなくなる。撤回させなければ日本の産業も守れない」と主張。日本経済には輸出第一ではなく、国内消費を活発にし、内需を活発にすることが必要だと強調しました。
山下氏は「トランプ関税に大企業が浮足立ち、労働者の雇用縮小や、取引先の単価を削るなどしたら逆効果だ。今大事なのは暮らしを守り消費を拡大することだ」として、大企業に雇用と中小企業を守らせるよう政府に求めました。
山下 大企業には社会的責任があり、巨額の内部留保もある。こういうときこそ経団連に働きかけるべきではないか。
首相 労働者や下請けにしわ寄せがいくことがないよう体制を強化していく。
山下氏は、トランプ関税は、リーマン・ショックやコロナ時を超える甚大な影響が出ることが想定されているとして迅速な対応が必要だと強調。ゼロゼロ融資の復活や雇用を守る給付金などの対策を求めました。
石破首相は「コロナの時に取った対策に匹敵するものを考える。より効果的に、より弱い立場の人に届くような対策を実行していく」と答弁。山下氏は、日本産業の基盤を担う中小企業を、不当なトランプ関税で失ってはならないと強調しました。
PFAS
調査・除染は業界の責任
![]() 一般社団法人電子情報技術産業協会ホームページの会員一覧から山下芳生事務所作成 |
山下氏は、国が公的資金を投入する台湾の半導体企業TSMCの工場(熊本県)から処理水が排出されている河川や、キオクシア四日市工場(三重県)の排水口からPFASが高濃度で検出されていると指摘。PFASの製造・使用業界が自ら調査して除染する責任があると汚染者負担の原則を強調し「国から巨額の補助金を受け取り、収益を得ながら有害物質汚染を放置するなど許されない」と主張しました。
山下氏は、電子情報技術産業協会会員企業384社の製造拠点を調査した結果を示し、大量のPFASを製造工程で使用している可能性が非常に高い半導体工場が、全国41都道府県256自治体に366箇所も立地していると指摘(図)。これらの企業にPFASの使用・排出・保管・処理などの報告を求めるべきだと述べ、全国の半導体企業周辺の汚染の実態を調査するよう迫りました。
浅尾慶一郎環境相 既に製造をとりやめているPFOSとPFOAの測定は、地方自治体で地域の実情に応じ実施している。
山下 半導体工場が汚染源である可能性が高い河川の汚染がたくさんあるのに、行政も企業も誰も調べていない。
武藤容治経済産業相 何を使用しているかは、メーカーとの競争などもあり、公表を求めることは困難。
山下 (化学物質による環境汚染を防止するための)化審法では、企業に対し報告を求めたり立ち入り検査もできるとしている。
さらに山下氏は、欧州連合(EU)では安全性が確認されていない物質は規制するという予防原則に立ち、PFASの規制を強化していると指摘。欧州化学品庁は、ジャーナリストらが作成した汚染マップに基づき1万種以上といわれる全てのPFASの禁止を提案していると強調しました。
山下 日本の規制は3種類のみで、あまりに遅れている。
環境相 非常に数が多く、個別の物資に関する知見が不足している。
山下氏は、EU案のパブコメに、経産省が「危険性が明らかでないものは規制しないように」という意見を出しているとして、「危険性が確認されるまで待っていたら、取り返しがつかないことになる」と批判。公害の原点と言われる水俣病の教訓を踏まえるべきだと首相に迫りました。
山下 2004年の最高裁判決は、国が規制権限を行使せず、水俣病の発生拡大を防止しなかった責任を断罪した。今こそ政府として全国的なPFAS汚染の調査に取り組むべきだ。
首相 一律全ての半導体工場への調査は必要ない。EUの動きについては知識を早急に共有する。
山下氏は、知識の共有にとどまらない「実行」を強く求めました。
統一協会
「世界日報」登場なぜ隠す
山下氏は、石破首相が、反社会的な活動を繰り返した統一協会系の日刊紙「世界日報」に登場したことを隠し続けたとして、石破首相と統一協会との癒着をただし真相解明を求めました。
山下氏は、石破首相が地方創生担当相当時、「世界日報」の社長を内閣府の大臣室に招き座談会を行ったとの記事が写真付きで「世界日報」2015年1月1日付に掲載された事実をつきつけました。
山下 「世界日報」は統一協会の開祖である文鮮明氏の提唱で創刊された新聞だ。なぜ今まで隠したのか。
首相 記事は事実だ。22年9月の自民党の調査(統一協会や関連団体との関係の点検)があったが、党本部に報告した。
山下 自民党には報告したのかもしれないが、世の中には報告していない。
山下氏は、自民党の点検結果の公表後、石破首相が東京新聞のインタビューで教団側との関係について問われたが、「世界日報」に記事が掲載されたことには触れていないと指摘しました。
山下氏は、統一協会関係者との写真を撮られれば信者勧誘に利用されると強調し、「安倍晋三元首相や岸田文雄前首相も写真を撮られ利用された。胸を痛める必要がある」とただしました。「夫が亡くなって受け取った数千万円の生命保険を『そんな汚いお金を持っているからご主人は死んだ』と不安をあおられ、教団に献金した」と語った元信者の証言に触れ、反社会的カルト集団の信者獲得に自らの行為が利用された可能性があるとして「反省し、真相解明すべきだ」と追及。石破首相は「真摯(しんし)に受け止める」と答えました。