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2025年4月8日(火)

主張

ラピダス支援法案

巨費の投入で国民負担の危険

 自公政権は、特定の半導体企業に巨額の国費を投入するため、法整備につきすすんでいます。次世代半導体の国産化を目指すラピダスなど一握りの企業に10兆円の公的支援を行う「ラピダス・半導体産業支援法案」の今国会での成立を狙っています。

 ラピダスは、回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)という微細半導体の2027年の量産開始を目指しています。トヨタ自動車やソニーグループなどが株主です。

 同法案は、半導体の研究開発のための国有の施設・設備をラピダスにそっくり譲渡するのと引き換えに、経済産業省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が同社株を取得し、将来の同社の株式上場以降に売却し、公的資金を回収するものです。

 さらに▽IPAを通じて政府出資ができるようにする▽民間の融資にIPAが債務保証する▽登録免許税や法人事業税などの税負担の軽減―と至れり尽くせりです。

■懸念される大赤字

 ラピダスは取引先も、売り上げの見込みも立っていない状況で、巨額の赤字を生むことが懸念されています。民間の出資も集まらず、その分、国が税金をつぎこむ形です。しかもはっきりした上限は示されておらず、青天井に膨張し、事業の失敗で巨額の損失のツケが国民負担として押し付けられる危険があります。

 半導体産業をめぐっては、19年から半導体基金に約4・1兆円が予算計上され、経産省のお手盛りでラピダスや台湾積体電路製造(TSMC)などの一握りの企業にばらまかれてきました。

 経産省は3月31日、ラピダスに対し、25年度に最大8025億円の追加支援を行うことを決めたと発表しました。ラピダス1社への補助総額は最大1兆7225億円に膨らみ、これとは別に今年後半にも1000億円を出資する計画です。

■破綻の責任とらず

 1980年代に世界の売上額の半分を占めていた日本の半導体産業は、日本市場に外国製半導体を20%以上受け入れるという日米半導体協定を結ばされ衰退しました。

 日立製作所や日本電気などの半導体部門を合併してつくられたエルピーダメモリは、2008年のリーマン・ショックで経営危機に陥り、「緊急異例の措置」として400億円の公的資金が投入されましたが、わずか3年で破綻し約280億円が国民負担となりました。2月14日の衆院予算委員会での辰巳孝太郎議員の追及に武藤容治経産相は、政府の誰も責任をとらなかったことを認めました。

 さらに、ラピダス社会長の東哲郎氏は23年10月の講演で「重要な部分は国防の領域」「まずはアメリカに届ける」と米国の軍事需要を優先すると発言。3月25日の衆院本会議で辰巳議員が「軍事利用させない明確な歯止めが必要」と迫ったのに対し、武藤経産相は「将来の販売先について制限を課すことは慎重であるべきだ」と拒否しました。

 米国言いなりで、赤字でも、止められなくなるおそれがあります。米国の軍事需要のために巨額な税金をつぎ込むことは許されません。


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