高市早苗首相(自民党総裁)と日本維新の会の藤田文武共同代表は会談で、両党連立政権合意に基づき、衆院比例定数削減法案を今国会で成立させることを確認しました。国政に国民の声を届けるパイプを細くする定数削減を議論の大前提にすえ、与野党の協議がまとまらなければ比例定数を自動削減してしまおうと狙う暴挙です。
必要性示さず自動的に
自維両党がまとめた「衆議院議員の選挙制度及び定数削減に関する法律要綱」は、定数削減を必要とする根拠を何ら示さず、「定数削減に関する法制上の措置の検討の在り方並びに当該措置を講ずべき期限について定め」るとしています。しかも、定数削減が「当該期限内に講じられない場合の措置」も定めるとし、法施行後1年を経過すれば、比例定数を自動的に45削減するなどとしています。
自民党は、裏金事件の影響を受け各種選挙で連敗し、衆参両院で単独過半数を割り込みました。しかも、公明党が連立政権から離脱したもとで、政権維持のために維新と連立を組まざるを得なくなったのです。
高市政権は維新との連立政権合意で、裏金事件を受けた「政治改革」だなどと論点をすり替え国民をごまかす形で定数削減を約束しました。
両党は2025年の臨時国会に、定数削減法案を提出しました。衆院定数から小選挙区で25を、比例区で20を削減する以外、立法の必要性(立法事実)の記述もないなど、今回の法案と基本的に同じ内容でした。このため、日本共産党や立憲民主党など野党6党・会派がそろって反対。主要各紙も社説で「憲政の常道に反する暴論」(「読売」)、「理屈も手順もでたらめ」(「毎日」)などと一斉に批判し、法案は審議入りに持ち込むことさえできなかったのです。
国際的にも日本は総人口に対する議員定数の比率は少なく、何の根拠も示さない民意切り捨ての定数削減など許されるものではありません。
民意の切り捨てさらに
現行の衆院選挙制度は、小選挙区と比例代表の二つの選挙(小選挙区比例代表並立制)で構成。同制度は1996年衆院選から実施されています。
小選挙区は、選挙区の最大得票の候補者1人しか当選できず、それ以外の候補の得票は選挙区での当選に結び付かない大量の「死票」となるなど、大政党本位に民意をゆがめることにつながっています。実際、今年2月の衆院選の小選挙区で自民党は36・7%の得票で67・8%もの議席を獲得。「死票」は約2735万票にも達しました。
小選挙区には大量の「死票」などの本質的な弊害をもつことから、制度導入時には小選挙区制導入を推進した勢力も「民意の反映」を口にせざるを得ず、政党の得票数に応じて議席を配分する比例代表と組み合わせた選挙制度となったのです。
比例45削減は、並立制の趣旨を否定する大改悪です。小選挙区定数300、比例定数200で始まった並立制は、その後消費税増税などを強行するため「身を切る改革」を看板に定数削減を強行。小選挙区で11議席削減に対し、比例では24議席も削減されました。
さらに比例のみ45も削減した場合、総定数に対する小選挙区の定数割合は制度実施時の60%から69%へ増加。逆に比例定数は40%から31%へと減少します(図)。多様な民意の切り捨てがさらに強まるのは必至です。
国会の議論と意見無視
定数の問題は、主権者である国民の意見をどう反映するかを、選挙制度全体で考えるべきです。そのために、衆院議長のもとに設置された衆議院選挙制度協議会があります。
法案要綱は定数削減を前提として、定数削減の「検討」を同協議会で行うとしつつ、なんらかの定数削減が行われない場合は、「(比例区定数を)45人削減して131人とすることにより、衆議院議員の定数を420人とする」としています。
今国会の同協議会の参考人質疑では、政治学者から「(議員定数削減は)国民の意見を伝える経路が減ってしまう」(5月21日)との声があがり、自治体首長からも「定数削減は地方切り捨てになる。これはあってはならない」(同12日)など定数削減に反対する意見が多くを占めました。法案要綱は、参考人の意見を含むこれまでの協議会での議論を無視するものにほかなりません。
選挙制度は国民の代表を決める民主主義の根幹にかかわる制度で、与党が数を頼みに自分たちに都合のよいものへと勝手に変えることが許されるものではありません。
自維の衆院定数削減法案を巡る経過
【2025年】
10月20日 自民、維新が連立合意。衆院議員定数について「1割を目標に削減するため、臨時国会に法案を提出し、成立を目指す」
12月5日 与野党協議会で1年以内に定数削減の結論が出なければ、小選挙区25、比例代表20を自動削減するとした法案を自維が臨時国会に共同提出
【26年】
1月23日 衆院解散で法案が廃案
3月17日 高市首相と維新・吉村代表が党首会談。定数1割削減法案を今国会で成立目指す方針を確認。吉村氏は「比例議席のみを削減すべきだ」と主張
4月16日 選挙制度の在り方を検討する与野党協議会が再開
5月29日 25年国勢調査人口(速報値)公表。「1票の格差」が2倍以上になった小選挙区は14都道府県の計39選挙区に
6月4日 自民・鈴木幹事長が高市首相から比例定数の1割削減を目指すよう指示されたと説明
11日 自民党が合同会議で、与野党協議で結論が出なければ自動的に比例定数45削減する内容の法案を了承
12日 高市首相と維新・藤田共同代表の会談で、定数削減法案を「必ず国会に提出する」と確認

