昨年夏の参院選まで対峙(たいじ)する関係にあった立憲民主党と公明党が、それぞれ衆院で解党し合流して、新党「中道改革連合」を結党し、政界に衝撃を与えました。立民が、これまでの政策の中核だった「安保法制の違憲部分の廃止」「原子力発電所の新増設は認めない」などを放棄し、いずれも容認に転換しました。結党に至る経過を振り返り、その政治的本質を検証します。
(写真)新党「中道改革連合」の結党大会=22日午後、国会内
(写真)斉藤公明党代表が「中道」結成について語ったネット中継を報じる公明新聞17日付
経過からわかることは、公明党・創価学会主導の新党づくりだということです。
立民関係者によると、昨年10月10日に公明党が自民党との連立を解消し離脱したのち、創価学会の佐藤浩副会長が立民サイドに接触し、公明党が小選挙区から撤退する代わりに、比例区で統一名簿をつくる形での選挙協力を持ちかけたといいます。立民は昨年夏の参院選で比例票を416万票も減らし、党勢回復の道筋を明確にできないままでいました。立民サイドでは、佐藤氏との接触をきっかけに「保守・中道ブロック」形成の動きが強まります。
同25日には立民の枝野幸男元代表が、安保法制に「違憲部分はない」と発言。党の創立者による創立の原点を否定する発言に驚きが広がりました。その背景には公明サイドからのプレッシャーがありました。公明は「連携するには安保法制がネックだ。安保法制の内容を、限定的な集団的自衛権にとどめたことは公明党の金字塔。連携するには『違憲』の立場を変えてもらう」(西田実仁幹事長ら)と要求していました。
枝野氏はさらに12月20日、「古い原子炉を廃炉にして、リプレース(建て替え)して最新鋭にした方が安全性は高まる。それはありかもしれない」と発言。原発新増設、再稼働容認に近づく姿勢を示してきました。
公明「五つの柱」
先立つ動きが公明党側にありました。同党は2024年の総選挙に続き、昨年夏の参院選でも惨敗していました。総選挙では21年総選挙から比例票を115万票減らし、石井啓一代表(当時)が落選するなどの大惨敗を喫し、25年参院選ではさらに比例票を75万票減らし14議席から8議席に後退する結果に。
25年9月に発表した「参院選 党総括」では「政治とカネの問題で揺れ続ける自民党との距離感、例えば不記載議員への推薦が清廉な公明党のイメージを損なったのではないか」「公明党こそが国民のニーズに応え得る『責任ある中道改革勢力』の軸として…自民党のみならずこの国の将来に責任を持つ政党や政治家の皆さんと、政策実現に向けたコミュニケーションを図ってまいります」と打ち出していました。
そして同年11月29日の全国県代表協議会で「中道改革の旗印」と位置づける「五つの政策の柱」を打ち出しました。これが中道改革連合の綱領の土台となりました。
解散風で一気に
立民関係者によると「公明党の斉藤鉄夫代表と野田佳彦代表は、新進党時代のつながりからかなり親しい関係にあり、高市首相による急な解散の動きの中で、一気に話が進んだ」といいます。
今年1月9日深夜、高市首相が「衆院解散を検討」(「読売」)との情報が流れると、12日には東京都内のホテルで野田・斉藤両代表が会談。そこでは、小選挙区は公明が撤退する代わりに立民サイドが「比例は公明」と運動する自公協力のパターンと、統一名簿をつくり政治団体を結成するパターン、新党に合流するパターンなどが話し合われたといいます。野田氏は会談後「より高いレベルでの選挙協力」だと語りました。これを受け、公明党の支持母体・創価学会は14日、全国方面長会議を開催し新党結成を確認。翌15日に公明党の中央幹事会と立民の両院議員総会の確認を経て、両党による新党結成が急ピッチで進んだのです。双方とも党員、支持者、サポーターらはもちろん、所属国会議員にさえ事前の説明のない執行部による強引な進行でした。
自民と敵対せず
これを受け新党の共同代表に就任することになった野田・斉藤両氏が16日に共同で記者会見。そろってテレビ出演するなど注目を集めます。綱領・基本政策の発表は19日でしたが、この中で新党の本質についての重大な発言が相次ぎます。
16日夜のBS番組フジ・プライムニュースで斉藤氏は、「連立離脱をした後、公明党が中道改革の軸になるという大きな方針を決め、結集のもとになる旗を五つ掲げ、これに賛同する人が集まって新しい党をつくっていく」ことになったとして、公明主導を強調します。19日に発表した「基本政策」では、「日米同盟を基軸にした抑止力・対処力の強化」を明記し大軍拡推進を鮮明にした上、自衛隊の憲法上の位置づけなどの国会論議を踏まえ「憲法改正論議の深化」を図るとしました。
一方で「いろいろな党の方に働きかけてきた」とし、「特定の党と敵対する、例えば、自民党と敵対することを目的にしているわけではない」と強調。立民だけでなく、自民党の「穏健保守」といわれる人や国民民主党とも話してきたとし、「今回の解散で急きょ加速した形になった」「選挙後には、一つのチームとして一緒に活動できる可能性がある。そういう視野を持ちながら運動していきたい」と述べました。野田氏も「政界再編のうねりに」と呼応しました。
これをより赤裸々に述べたのが、新党結成を前に開いた関係者との会合での斉藤氏の発言でした。斉藤氏は「自民党に対抗するだとか、自民党と敵対するとか、そういう思いはない」「将来、国民民主党、自由民主党の皆さんたちとの合流、より中道のかたまりをつくるときに、避けて通れないのが、平和安全法制は合憲であるということ、原子力発電は認めるということ」だと野田氏に語ったと述べました。
「中道改革連合」結成の動きは、立民に安保法制合憲・原発容認をのみ込ませ、同党を政治的・組織的に解体、吸収しながら、さらにその先に、国民民主党や自民党との「一体化」「合流」を視野に置くものです。メディア関係者の中から「自民党への対決姿勢も、政権交代の姿勢もない。立民が安保法制の違憲の主張を投げ出したことは重大だ。自民党との連携を公然と言っている。大連立につながりかねない」との厳しい見方も出ています。
衆参で自民が過半数割れしているいま、中道=“極端な左右の主張を排する”という口実で、新たな「自公」政治の延命の政治的基盤を強めようとしています。
高市政権の暴走の根源にあるのは、「財界・アメリカ中心」という自民党政治そのものです。その基盤を強化する流れでは、「政治を変える」どころか、暴走に立ち向かうこともできないのではないでしょうか。

