薬の患者負担を増やす議論が厚労省の審議会で行われています。自民党と連立を組んだ日本維新の会は、「OTC類似薬の保険適用除外」を政策に掲げており、鎮痛解熱剤、咳(せき)・痰(たん)、花粉症の薬など成分や効果が似ている市販薬がある薬(OTC類似薬)を保険から外すことを狙っていました。
しかし、患者・医療団体から「市販薬では負担が数十倍、生きていけない」「病気の見逃し、重症化や副作用が懸念される」との批判が相次ぎ、厚労省は11月27日の審議会に、保険から外さないことを「前提」としつつ、患者に別途の負担を求めることを提案しました。
■患者負担10割化も
「別途の負担」をどのようにするかの具体化は今後の議論ですが、厚労省はOTC類似薬について、▽患者負担を現行(1~3割)から引き上げる▽選定療養制度(混合診療)を使って、薬代の全部または一部を保険外にし、その部分は全額自己負担にする―などを念頭にしています。
報道によれば、それに先立つ11月21日の自民と維新の協議会に、厚労省は▽全額患者負担(10割負担)とし、慢性疾患や低所得者などには配慮▽「選定療養」制度を適用―などの案を示していました。
10割負担となれば、現役世代でも3倍以上、75歳以上の高齢者は10倍と大幅な負担増となります。
「選定療養」は混合診療の一種です。医療保険制度では、保険の利く医療(自己負担1~3割)と利かない医療(全額自己負担)を併用する混合診療を禁止していますが、例外的に認めるものです。
しかし、国民皆保険制度のもと、必要な医療は保険でカバーされるべきです。厚労省自身、『厚労白書』などで、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」と掲げています。混合診療を一部解禁した2004年の厚労相と規制改革担当相の「基本的合意」にも、同じ文言が明記されています。
■揺らぐ国民皆保険
医師が治療に必要だと認めて処方する薬剤を、同じような市販薬があるからと保険給付から外したり、保険の利かない部分を持ち込んだりするのは、国民皆保険の理念や大臣合意に反します。
この間、薬の患者負担増がすすめられてきました。2024年10月からは、後発品がある先発医薬品を患者が希望すると「選定療養」が適用され、先発品と後発品の価格差の4分の1が別途、自己負担になりました。この保険外負担を4分の1から2分の1、さらに全額にする案も厚労省は審議会に提案しています。
財政制度等審議会が2日にまとめた26年度予算編成に向けた建議は、OTC類似薬にとどまらず広く外来薬剤を対象に一定額の自己負担を追加的に求めるとしました。1997年に導入され2003年に廃止された、処方薬の種類数に応じた薬剤一部負担制度の再導入も狙われています。
OTC類似薬の保険給付外しや負担増を許せば、それ以外の医薬品の負担増の突破口になりかねません。必要な医療は保険で給付するという国民皆保険の理念を揺るがしてはなりません。

