安倍晋三元首相が奈良市で参院選の街頭演説中に銃撃されて死亡した事件(2022年7月8日)で、殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)の公判が2日、奈良地裁(田中伸一裁判長)でありました。裁判官による被告人質問で山上被告は、安倍氏を銃撃の対象にした理由について「統一協会(世界平和統一家庭連合)と政治のかかわりの中心にいる方で、他の政治家では意味が弱いと思った」と語りました。
山上被告の母親は統一協会の信者で、夫の生命保険金などで計約1億円を献金し、02年に自己破産しました。
安倍氏は21年9月、統一協会の関連団体「天宙平和連合」が開いたイベントにビデオメッセージを送り、協会トップの韓鶴子総裁の名をあげて「敬意を表します」と称賛していました。
これまでの公判で山上被告は、ビデオメッセージを視聴した感想を「絶望と危機感。怒りというよりは困るという感情」だと明かしていました。
2日の公判では「困ったというより、困惑し、失望した」「今後も安倍氏と協会の関係が公に続いていくとすれば、受け入れがたい。嫌悪感や敵意が徐々に強まっていった」と述べました。
手製銃で安倍氏の上半身を狙い、銃撃の瞬間は「なるべく何も考えずに撃った」と振り返りました。
母親に怒りや恨みの矛先が向き、銃殺を考えても実行しなかった理由に関しては「そもそも母の行動は協会の教義に従っている」「母が献金している協会に抗議したかった」と説明しました。
同日は宗教社会学者の櫻井義秀氏が証人として出廷し、山上被告の家庭環境について「経済的な困窮だけではなく、母の入信と献金をめぐって常時、争いが起きていた」と述べました。

