財務相の諮問機関である財政制度等審議会は2日、2026年度予算編成に向けた建議(意見書)をまとめました。
社会保障
社会保障については、「現役世代の負担軽減」を口実に医療と介護で患者・利用者に大幅な負担増を提言しています。
26年度は2年に1回の診療報酬改定の年です。一般病院(精神科病院、療養型病院、診療所を除く国公立や民間の病院)の7割超が医業収益で赤字に陥っている中で、建議は「単に物価・賃金の上昇に対応する全体改定率を求めるなどということがあってはならない」と背を向けました。医療従事者の処遇改善への対応を指摘しながら、診療報酬の「不断の合理化・適正化(=削減)を進めていくことが求められる」としています。
市販薬と同等の効能がある処方薬(OTC類似薬)を巡り「自己負担の在り方を見直すことが必要」と提起。さらにOTC類似薬にとどまらず「外来薬剤に関して広く対象として、一定額の自己負担を追加的に求める」としています。
70歳以上の患者自己負担割合について、一律に「現役世代と同様に3割とすべき」だとし、その実現へ具体的な道筋を明確に示すことが必要と圧力をかけています。
保険診療と自由診療を併用させる「選定療養拡充」や、受診時の定額自己負担の徴収なども検討課題として盛り込んでいます。
介護では、利用料2割負担の対象拡大について「確実に実施すべき」だとしました。3割負担の対象となる「現役世代並み所得」の判断基準の見直し、ケアマネジメントの有料化、多床室の室料負担の拡大など、利用者負担増メニューも並んでいます。
生活保護では、保護費の約5割を占める医療扶助の削減のために、DXの活用を掲げています。
軍事研究
政府が進めている民間技術を利用した軍事研究を巡っては、武器・装備品の開発につなげて「目に見える成果を生み出す必要がある」と迫りました。
政府は安保3文書に基づき、民間の先端技術の軍事利用を重視。将来の戦い方を変える技術を研究する「ブレークスルー研究」や、企業・大学の研究者に資金を出す「安全保障技術研究推進制度」などに多額の予算を投じています。
財政審は、参考資料で15~23年に同制度で終了した事業の48%が、研究成果の活用状況を把握する調査が行われていなかったと指摘。研究を「やりっ放し」にせず、「研究結果を最大限生かすよう取り組むべきだ」と述べました。
また、企業や大学による軍事研究を促すため、成果に応じて懸賞金を出したり、自己負担分を国が肩代わりしたりする制度の導入を提案しました。
24年に創設した「防衛イノベーション科学技術研究所」で行われている「ブレークスルー研究」について、武器・装備品への実用化が見込まれる研究を本格研究に移行する際の運用基準が定められていないと問題視しました。
これらの要求は、政府や企業、大学で進めている軍事研究を実用化させ、実戦配備を加速するためです。

