米国の顔色をうかがい、金額ありきで決めたとしか思えません。高市早苗内閣が2025年度補正予算案に盛り込んだ軍事費です。
高市内閣は11月28日に補正予算案を閣議決定しました。軍事費と関連経費として1・1兆円を計上し、国内総生産(GDP)比2%という政府の目標を前倒しで達成しようとしています。
■数字ありきで決定
政府が22年末に策定した安保3文書の一つである「国家安全保障戦略」は、27年度に、軍事費と関連経費を合わせ、22年当時のGDPの2%にすると定めました。必要な予算は11兆円になります。
これを受け、22年度予算で5・4兆円だった軍事費は23年度以降、急激に増加し、25年度の当初予算では関連経費と合わせ、9・9兆円に上り、GDP比は1・8%となっていました。
高市首相はトランプ米大統領の来日を目前に控えた10月24日、国会での初の所信表明演説でGDP比2%の目標達成を前倒しし、補正予算と合わせて25年度中に実現するという考えを示しました。
来日したトランプ大統領との会談(同28日)では「防衛費の増額に引き続き取り組んでいく」と約束しました。
しかし、補正予算の編成は財政法で、災害への対応など「(本)予算編成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」に限り認められているものです。GDP比2%の実現前倒しは、文字通り「数字ありき」で、何の緊要性もありません。
日本の軍事費のいっそうの増額を迫るトランプ大統領の要求に応じるためというのが本音にほかなりません。
今回の補正予算案の軍事費8472億円の中身からも緊要性の説明はつきません。米軍新基地建設など米軍再編経費が最も金額が大きい3451億円を占めていることが象徴です。
米軍再編経費には、米空母艦載機の着陸訓練などのための馬毛島(鹿児島県西之表市)での自衛隊基地建設費2751億円や、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設費534億円を盛り込んでいます。しかし、これらは、本予算編成後に急に必要になったものではありません。
一方で、自衛隊の「災害への対処能力の強化」は78億円にすぎません。
■3.5%否定せず
高市首相は先の所信表明演説で、安保3文書を26年中に改定するため、検討を開始すると述べました。軍事費のGDP比2%目標を25年度中に前倒しで達成すれば、新たな大軍拡の口実が必要になるからです。
トランプ政権の高官は日本の軍事費をGDPの3・5%にまで引き上げるよう求めています。
24年度の日本のGDPで計算すれば、3・5%は21兆円と途方もない額になります。政府の医療・介護・生活保護の予算を大きく上回る規模で、国民の暮らしも日本の財政も破壊するものです。
高市首相はGDP比3・5%を目標にすることも否定しません。日米軍事同盟絶対で、軍事力の強化にひた走る政治の転換が必要です。

