「台湾有事」発言、軍事費GDP比2%前倒し実施、非核三原則見直し、武器輸出の規制撤廃、原子力潜水艦の導入検討、9条改憲案条文化、原発再稼働推進、医療・介護など社会保障の大削減、労働法制規制緩和―。高市内閣と自民・維新連合の大暴走が始まっています。国民生活との矛盾の激化は避けられず、世論と運動が急速に広がっています。(中祖寅一)
(写真)パレードに出発する参加者ら=9日、熊本市
「台湾海峡で有事になれば当然、南西諸島はじめ日本に影響が及ぶ。『台湾有事は日本有事』との発言は、石破前政権の親中姿勢を転換し、堅い保守層へのメッセージとして意図的に出したものだ。靖国神社への参拝も検討しているだろう。維新との連立は加速材料になっている」―自民党議員の一人は語ります。
中国側の厳しい批判など緊張・軋轢(あつれき)が強まる中、自民党は20日に安保3文書の前倒し改定の協議を開始。非核三原則の見直し、規制撤廃による武器輸出の拡大、原子力潜水艦の導入検討、無人機の活用などが議題となります。
政権が28日に閣議決定した補正予算案では、軍事費GDP比2%の前倒しのため1・1兆円を計上。27日には自民党と維新との間で改憲に向けた実務者協議を開始し、衆院憲法審査会に「条文起草委員会の設置」を提案しました。
経済成長が止まり、賃金が上がらず、人口減少にも歯止めがかからない―「失われた30年」への国民の怒りと失望が昨年の総選挙と今年7月の参院選挙での自公過半数割れをもたらしました。アベノミクス・異次元金融緩和のもとでの異常円安がもたらした物価高騰への無策の一方、自民党の裏金疑惑が国民の怒りを爆発させました。
ところが高市首相は自ら「ニュー・アベノミクス」を公言。実際、消費税減税に背を向け、賃上げ対策も財界へのお願いベース、社会保障大削減と大軍拡推進です。これでは根本のところで大破綻した路線への逆戻りです。
立場超え政策転換の声
(写真)高市首相(右端手前)に質問する田村智子委員長(左)=11日、衆院予算委
高市政権は、飯田祐二元経産次官を政務秘書官に置き、第2次安倍政権で首相補佐官・政務秘書官を歴任した元経産官僚の今井尚哉氏を内閣官房参与に起用。原発再稼働や積極財政による企業支援策を強めます。
「高市政権発足後、石破政権末期に140円台前半まで上がった為替相場が、一気に150円台後半まで下げている。これではガソリン暫定税率の廃止も輸入物価の高騰にのみ込まれてしまいかねない」
自民党内からも危惧の声が漏れます。
別の関係者は「企業・団体献金の禁止に対し『そんなことより定数削減を』という首相の発言は、2回の選挙で審判を受けたことで決着済みという本音だ。ただ議員定数は有権者のもので、『議員の身を切る』というロジックは筋違い。難しくなる」とこぼします。メディア関係者も「『そんなこと』ではなく『まさにそこ(裏金)』が問題。この発言は潮目になる」と指摘します。
日本共産党の田村智子委員長は27日の記者会見で、高市政権の総合経済対策について「暮らしと経済を立て直す太い柱が何もない」と批判。巨大企業への法人税減税の見直しと消費減税、内部留保課税を原資とした最低賃金引き上げのための中小企業支援、大軍拡の中止など政策の抜本的転換を求めました。
ミサイル配備反対、大軍拡・改憲反対、社会保障の大削減反対の草の根の声は、保守・革新の立場を超え大きく広がりつつあります。

